2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320059
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高木 繁光 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教授 (00288606)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
MELNIKOVA Irina 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (10288607)
大平 陽一 天理大学, 国際文化学部, 助教授 (20169056)
銭 鴎 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教授 (70298701)
宮嵜 克裕 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 専任講師 (00411075)
|
Keywords | 分身 / 映画 / 文学 / 近代 / 民衆 / 主体 / 分裂 |
Research Abstract |
本年度は映像研究班では、高木はニーチェ、ブレヒト、ベンヤミンなどドイツ近代の思想家と映画的思考の結びつきという観点から映像作品の分析を進め、ポルトガルのオリヴェイラ、イタリアのロッセリーニ、フランスのルノワールというサイレントの時代から映画を撮りはじめたほぼ同世代の監督の作品に共通して見られる民衆と分身のテーマについて考察した。メーリニコワは、ソ連時代の映画に表象された民衆像(スラブ民族と日本人)に着目しながら、民衆の中に紛れたダブルスパイなど主体の分裂をテーマとする映画について主に考察した。大平はエイゼンシュテインの映画理論から出発しながら、映像作品において民衆に対して情動誘導的に作用するナラティヴの意図性に回収されない「むきだしの物質性」の「非意図性」に着目することで、映画自体の内部における二重性=分身性について考察した。 文学研究班では、諫早は1920年代の中東欧諸国へのロシア人亡命者の動向を調査し、ナボコフを中心とする亡命文学における主体の危機をテーマに考察した。銭は清朝末期に日本へ留学した知識人・文人が、留学中に学んだ近代的知を携えて帰国した後に変革期の中国で体験する近代化と伝統の間での分裂・葛藤について考察した。宮嵜はマラルメ詩学における<身体>という位相を、詩人の分身としてのイジチュールの狂気と、同毒療法による詩人自身の狂気の克服過程との関連から考察した。 今後は近代の大都市の発展過程において現れてくる近代的民衆像と分身テーマの関係性にさらに着目することで、映像研究班と文学研究班の研究を有機的に関連させてゆきたい。
|
Research Products
(11 results)