2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320059
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高木 繁光 Doshisha University, 言語文化教育研究センター, 教授 (00288606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
MELINIKOVA Irina 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (10288607)
松本 賢一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (00309072)
銭 [オウ] 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 准教授 (70298701)
大平 陽一 天理大学, 国際文化学部, 准教授 (20169056)
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Keywords | 分身 / 映画 / 文学 / 近代 / 民衆 / 主体 / 分裂 |
Research Abstract |
本年度は最終年度に当たるため、研究成果報告書を作成した。メーリニコワは、ゲルマンの『フルスタリョフ、車を!』、ウチーチェクの『宇宙を夢見て』、ルビンチクの『南京の風景』というどれも50年代のソ連社会を舞台とした作品を対象として、そこに現れる分身テーマを分析した。諫早はナボコフの小説『絶望』の登場人物たちが背負っている二重文化性について分析し、他人が相違しか認めないところに類似を見る「二重視」の能力を、亡命者特有の感覚として位置づけた。大平は、エイゼンシュテインのモンタージュ理論が、近代的主体には相違しか見えない二者の間に「パトスの深層における原始・イメージ思考」による類似を見出すことであると指摘しつつ、しかし、これが芸術創造の方法論として成立するには、ロゴスの表層からパトスの深層への退行と同時に、再びロゴスの領域へと反転する双方向的運動=「二重の知覚」が不可欠であることを論じた。高木は、<偽>である分身が<真>となり<真>が<偽>となるというマキノ雅弘の映画における真偽の反転、<偽>の<真>に対する優位について考察し、そのような演劇的主体が、近代的リアリズムに反し、外見を演じることにおいて内面的葛藤を捨象しつつ、文楽人形のような様式的存在に近づいてゆくことを指摘した。松本はドストエフスキーの小説『おかしな男の夢』に登場する「地球」について、もとの地球ともとの地球の分身が「今ここで、ふたつ同時に存在する」「二重のありよう」としての世界であると論じ、この弁証法的「とんぼ返り」を経た二重世界で一人の子供の苦しみを分身的主体として引き受け、「全世界的な事物の秩序に責めを負って」ゆこうとする主人公のあり方を論じた。本冊子に掲載できなかったが、銭鴎は『紅楼夢』における夢の構造を荘子の胡蝶の夢との関連において考察し、宮嵜はマラルメ詩学における分身テーマをイジチュールの狂気を手がかりに考察した。
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Research Products
(13 results)