Research Abstract |
南琉球方言は,今回も与那国島方言を中心に調査をした。3型アクセント体系であることがほぼ確実になった体言は,それらにゼロ助詞,ガ,モ,カラ,マデ,ヨリの方言形を付けたアクセントを調べた。用言は,昨年度調べた基本形約300項目について,その過去形を調べた。また,主要な活用タイプをできるだけ網羅するような50項目を選び,それぞれについて19種類の活用形のアクセントも調べた。これは先行研究で欠けていた部分であり,その成果は8月の国際会議で発表する予定である(採択済み)。 沖縄本島那覇方言は,内間直仁,野原三義『沖縄語辞典-那覇方言を中心に-』(研究社出版)のアクセント付き項目をすづてパソコンに入力し,その電子化を終えた。今後,これを整理分析し,その疑問点を直接著者に確認をしながらそのアクセント体系を解明する予定である。 奄美方言は,和泊町方言集である甲東哲『島のことば 沖永良部島』の全語彙について和泊町皆川方言の話者に当たってそのアクセントを調査した結果を資料編の続きとして発表した。 同じく奄美諸島の徳之島浅間方言では,アルファベット関連語彙や数詞の調査も行なった。おそらく奄美方言ではこの分野に関するはじめての調査であろう。 本土方言では,日本語のアクセント史を考える上で非常に重要な香川県伊吹島方言について2つの調査をした。1つは形容詞とその活用形の調査である。もう1つは,40年以上前に和田実が録音したテープを聞き直してそのアクセントを報告した。青森市方言の後部2拍複合名詞のアクセント資料も,前年度に引き続いて公にした。 その他,海外の国際会議で以前発表したものが,今期,3本の英文論文となって公刊された(いずれも論文集)。アクセントと意味の関係を扱ったもの,鹿児島県の3つの2型アクセントの間の異同を明らかにしたもの,日本語標準アクセントの捉え方を論じたもの,の3点である。
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