2009 Fiscal Year Annual Research Report
中央ユーラシアにおけるイスラームの展開-初期の伝播から現代の「再生」まで
Project/Area Number |
18320116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱田 正美 Kyoto University, 文学研究科, 教授 (30109061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 一之 京都大学, 文学研究科, 准教授 (70221934)
稻葉 穣 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (60201935)
東長 靖 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70217462)
小野 浩 京都橘大学, 文学部, 教授 (40204250)
矢島 洋一 京都外国語大学, 国際言語平和研究所, 研究員 (60410990)
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Keywords | 中央ユーラシア / イスラーム / 神学 / 教理要綱 / スーフィズム / 中国ムスリム |
Research Abstract |
中央ユーラシアにおけるイスラームの歴史的展開の全体像を通時的に把握することを最終目標として、歴史地理、イスラーム神学、イスラーム神秘主義哲学、文化史など、従来概ね歴史研究からは等閑視されていた分野に関する知見を組み込んだ歴史像を描く可能性への橋頭堡を築いた。本年度は特にこの地域で作成されたペルシア語の問答体で記された教理要綱書に注目し、偶然の機会に入手した『チャハール・ファスル』と『ムヒンマート・アル・ムスリミーン』の合訂写本を校訂・刊行した。この書は、中国からアナトリア、ウラルからインドの間に広がるスンナ派イスラーム世界の全域に広く流布したものであるが、就中、中国ムスリムの間では明末清初以来翻訳が重ねられ、きわめて重視された。一方中央ユーラシアにあっては、様々に改訂、改編、増補が加えられ、家蔵の写本は、本来の姿をとどめると思われるテクストと比較して、その問答の数は『チャハール・ファスル』で2.5倍、『ムヒンマート・アル・ムスリミーン』では実に11倍に達している。この写本の問答は、元のテクストに見える信仰、神の認識、礼拝、沐浴の正統教義(オーソドキシー)と正統行為(オーソプラクシス)に加えて、所願成就のための祈祷の文句に関するものも含まれ、更には背中に垂らすべきターバンの端の長さ、楊枝を使う際に上の歯から始めるべきか、下からにすべきか、妻がどのような状況に至ればその夫は不貞をはたらかれたことになるか等々、シャリーアの規定に含まれるもの、あるいはそれ以外の儀礼(アダブ)の範疇に含まれるもの、更には中央アジア固有の生活慣行に関すると思われるものなど、極めて雑多な問題について手の問答が含まれている。従って、このテクストは民衆に近いレヴェルでの「日常のイスラーム」に関する第一級の資料である。
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Research Products
(5 results)