2006 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代のクリ利用に関する考古学・民俗学・年輪年代学的研究
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18320130
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Research Institution | Niigata Prefectural Museum of History |
Principal Investigator |
荒川 隆史 新潟県立歴史博物館, 学芸課, 研究員 (10416084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 勝彦 福島大学, 共生システム理工学類, 助教授 (70292448)
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Keywords | 考古学 / 縄文時代 / 年輪年代学 / 民俗学 / クリ / 花粉分析 / 大型種実 / 掘立柱建物 |
Research Abstract |
1 研究の目的 縄文時代のクリ利用は、果実の収穫、柱材を得るための伐採という、相反する行為を両立していた。これを成立させたシステムを復元することが本研究の大きな目的である。 2 現生クリの調査 現生クリ林の植物学的調査、および民俗学的調査によるクリの利用方法を明らかにすることで、遺跡データと比較できる実証的なデータを得る。調査地は山形県小国町金目にある三方を川に囲まれた丘陵上の平坦面にある4haのクリ園である。金目クリ園は、昭和初期までに丹波クリが植林され、後に多くが伐採されたが、昭和40年代にクリだけを残して間伐してできたものである。このため、丹波クリとヤマグリが混在している。調査は2.9haにある520本あまりのクリを対象とした。ここのクリは柱材として利用できるような高さ10m以上にまっすぐ伸びたもので、下草を刈る程度の管理以外に薬剤散布、施肥、枝打ち、摘果は一切行われていない。このような条件下にあるクリ林の成長速度を知るために23本の年輪試料を採取し分析した結果、初期10年間の平均年輪幅は4.1mmであった。青田遺跡のクリ材は平均4.8mmであるから、良好な生育環境下にあったことが分かる。また、90cm角のシードトラップを10mおきに19個設置し、落下・回収したクリ果実の大きさ・重量等を測定した。単位面積当たりの収量は一般果樹園の1/3程度だが、まったく管理されていない二次林内のクリの倍近くあった。クリ花粉の分析は地面の表層と空中で行い、クリ林内部では60%以上の高率を示すが、クリ林の範囲から外れると5%以下に激減することが明らかにされた。この金目クリ園について聞き取り調査する中で、かつてはコメの消費がわずかであった金目集落の周囲には、大きなクリ林が6か所存在しており、冬越しのため1軒で3俵程度消費していたことが分かった。 3 遺跡出土木柱の調査 縄文時代晩期末葉の新潟県青田遺跡から出土した掘立柱建物の木柱168点を新たに切断し、年輪解析を進めている。クリのほか多種類の樹種を分析することで、クリの生育環境を把握したいと考える。また、石川県真脇遺跡の環状木柱列のクリ柱根について試料を切り出し、年輪解析と14C年代測定によるウィグルマッチングを行った。この結果、クリの成長速度に加え、柱根間の年輪年代関係と暦年代が明らかになりつつある。一方で、建物と木柱の規模・加工・樹種との関係について検討を進めている。
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