Research Abstract |
行政法の基礎を構成する憲法原理である,法治国原理-この原理はさらに主観的側面と客観的側面に分けられる-,民主政原理,権力分立原理のそれぞれが,古典的要素と機能的要素を含むものと定式化した上で,行政法が主権国家の境界を越えてヨーロッパ化,さらには国際化する場合,古典的要素を維持しつつも,機能的要素をより重視すること,その意味で,古典的要素と機能的要素とのバランスを再考することが,憲法原理を実現するために必要となる,というテーゼを立てた。そして,日本において,上記の機能的要素を基調とする英米法起源の法制度が,古典的要素を基調とするヨーロッパ大陸起源の法体系の中で定着している様相を,ドイツ語で分析しヨーロッパに向けて問題提起するための論文の公刊準備を完了した。これはまだ問題提起の域を出ないが,ヨーロッパ行政,あるいは国際行政における「憲法化」が議論されていることに対応するものであり,平成20年度には,論文をもとにヨーロッパの研究者と議論することにより,上記のテーゼをより具体的,実証的に肉付けできると考える。個別の分野では,ヨーロッパのみならず国際的な広がりを見せている新公共管理の考え方,およびこうした考え方に基づく行政改革が,複雑な知識,技術,情報の生成過程を必ずしも尊重,考慮していないという問題提起を,技術規格や検査の分野を素材にして,英語論文で行った。この研究も,平成20年度における原子力法,環境法に関する基準策定過程の法的分析によって,深められると考えられる。
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