2008 Fiscal Year Annual Research Report
地方公立進学高校における「プラスアルファ」の教育と進路形成
Project/Area Number |
18330177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
苅谷 剛彦 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 教授 (60204658)
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Keywords | 高校教育 / 公立学校 / 大学進学 / 地域人材の形成 / エリート教育 |
Research Abstract |
平成20年度には、平成19年度実施の調査の分析結果を公表するとともに、追跡調査を行った。まず、得られた知見は以下の3点である。(1)地方から大都市の難関大学に進学することにより、地域間再分配政策に賛成しやすくなるというかたちで社会的責任が形成されること、(2)高校時代に学校行事に熱心に参加していた生徒ほど大学で自ら学んだり、成果を発表したりできていること、そして、(3)学校行事には出身階層下位の生徒が参加しやすいことを考慮すると、高校時代の学校行事には、階層下位の生徒が大学で学習しやすい環境を整えるという意味で階層間格差縮小の機能があるということである。これらの知見により、生徒たちの意識の差異を確認することで、高校段階における「プラスアルファ」の教育がその後のキャリア・社会生活(今年度は大学生活)に及ぼす影響を把握できたことになる。なお、これらの成果は、第60回日本教育社会学会大会(2008年9月19日〜21日、上越教育大学)において報告し、『東京大学大学院教育学研究科紀要』第48巻の掲載論文として公開した。 次に、パネルの3年目として、高校卒業2年後の追跡調査を実施した。まず、質問紙調査の実施に先立って、11名の調査対象者の協力をえてインタビュー調査を行い、「プラスアルファの教育」や大学進学に伴う地域移動が大学生活や将来展望に及ぼす影響を中心に把握した。このインタビュー調査の結果をふまえて調査票を作成し、前年度と同一の調査対象者に対して質問紙調査(郵送法)を実施した。有効回収票は514票であり、回収率は26.7%であった。これらの調査でえられたデータと、高校3年時・卒業後1年時のデータとをあわせて分析することで、1年間の浪人生活を経たうえで大学進学した者も含め、大学進学や地域移動という経験のなかで、将来展望や社会貢献に対する意識がどのように変化したのか、またその変化に「プラスアルファ」の教育がいかなる影響を及ぼしているのかを明らかにすることが可能となる。
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Research Products
(2 results)