Research Abstract |
平成18年度は,音楽学力,音楽適性,音楽能力テストに関する先行研究の収集と,教科「音楽」の授業内容及び音楽学力に対する意識調査と分析をおこなった。 まず,調査研究班では全国の小学校1600校,中学校1000校を対象に質問紙調査を実施して,最近の子どもと10年以上前の子どもとを比較して,音楽学力がどのように変化したか,具体的にどの分野で低下(あるいは不足)していると感じているか,音楽の授業内容へのコメント等について,意見を聴取した。その結果,(1)小中学校とも,全体的な音楽の力はやや不足気味であり,(2)「楽譜を読む力」が不足していること,(3)歌のレパートリーが不足していること,(4)歌声の質の低下などが指摘された。しかし,10年以上前の子ども達と比較した結果,音楽の力が低下したと回答している割合は3割弱であり,大多数はあまり変わらないととらえていることも明らかになった。 次に,歴史的研究班では学力観に関する報告書及び資料集をおこなった。その結果,地方によって学力観に対する関心度にかなりの違いがあること,統一テストの実施等についても行政側に温度差のあることが明らかにされた。 また,実験的研究班ではこれまでに市販されているさまざまな音楽テストを分析すると共に,海外の研究者達と意見交換をおこない,新しい音楽学力テストの提案に向けて,テスト項目の選出と検討をおこなった。その結果,テスト項目の選出にあたっては,(1)音楽適性(musical aptitude)と音楽学力(musical achievement)を明確に分ける必要があること(2)適性テストの項目はピッチパターン,リズム,音色,大きさの4種類にすること(3)音刺激は,西洋音楽のみに偏らないこと(4)テスト項目の妥当性・信頼性の検証に関しては国際比較が必要であることの合意を得た。 尚,研究分担者である村尾,杉江,嶋田は平成18年度におこなった調査結果の一部について日本音楽教育学会シンポジウムで発表した。
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