2007 Fiscal Year Annual Research Report
分子線エピタキシャル薄膜を用いた高温超伝導の正孔・電子対称性の厳密検証
Project/Area Number |
18340098
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
内藤 方夫 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (40155643)
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Keywords | 酸化物超伝導体 / 電子相図 / 電子・正孔対称性 / モット・ハバード絶縁体 / 分子線エピタキシー |
Research Abstract |
これまで、高温超伝導は母物質絶縁体に正孔または電子のいずれかをドープすることにより発現すると考えられてきた。電子・正孔ドーピングいずれによってもT_c〜30-40Kの超伝導溺発現することから、高温超伝導に対する「正孔・電子対称性」が主張されている。「正孔・電子対称性」は、現在広く受け入れられている「高温超伝導体をドープしたモット・ハバード絶縁体」とみなす描像を強く支持する現象と考えられている。本来、「正孔・電子対称性」の厳密な検証には、同一結晶構造への正孔及び電子ドーピングが比べられるべきであるが、バルク合成ではそのような試みができない。本研究は、エピタキシャル単結晶薄膜を用いて、同一結晶構造への正孔及び電子ドーピングを行い、高温超伝導の「正孔・電子対称性」の成否を厳密に検証することを目的とする。 平成19年度は四配位銅酸化物に着目して研究を進め、塗布法により作製したエピタキシャル薄膜により、Nd_2CuO_4構造の母物質RE_2CuO_4(RE:希土類元素)が超伝導化することを見出した。母物質T'-RE_2CuO_4は、電子ドープ超伝導体(RE,Ce)_2CuO_4、(RE,Th)_2CuO_4の発見された1989年以来、類似のT-La_2CuO_4と同じく電子相関の強いモット絶縁体と考えられてきた。T-La_2CuO_4は紛れもなく絶縁体であるが、T'-RE_2CuO_4の物性、特に超伝導性は頂点位置の不純物酸素に大きく影響されるため、不純物酸素の除去なくしては本系固有の性質に到達できない。今回の発見は低酸素分圧焼成という新しいプロセスと体積に比して表面積の大きい薄膜試料のメリットが相侯って、不純物酸素がほぼ完全に除去されたことが決め手となっている。ドーピングなしで超伝導化する物質の発見は「高温超伝導体をドープしたモット・ハバード絶縁体」とみなす描像を強く否定するものである。
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