2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340105
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
町田 一成 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (50025491)
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Keywords | 中性原子気体 / 超流動 / 量子渦 / 超伝導 |
Research Abstract |
当該度においては主として第2種超伝導体め混合状態、即ち渦格子状態の理論的研究を遂行した。混合状態の電子論は従来他の研究者によってあまり注目されてこなかった理由の一つは最も微視的理論であるBogoliubov-de Gennes(BdG)方程式を周期境界条件の下で解析的には勿論のこと、数値計算で解くことはほとんど不可能であり、そのためにこの方面の研究がほとんどされていなかったことによる。一方で、準古典近似に基づくEilenberger方程式はBdG方程式を簡便化したものであるが、高温超伝導体等の特別な系を除けばほとんどの超伝導体に適用できる優れた方法である。我々はこの点に着目してEilenberger方程式の解析的、数値的解法にここ数年来とり組んできた。その結果、この方程式を用いた渦格子状態の電子論を展開することが可能になった。我々のレベルにまで達している研究グループは世界的にみても他にはなく、いわば我々の独壇場になっている。 そのような研究状況を背景にして当該年度には高磁場でのパウリ常磁性効果の影響をEilenberger方程式に考慮してFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)状態の電子論を展開した。FFLO状態なその理論的予言かた半世紀近く経過しているが、実験、理論共々最近まで発展が見られなかった。最近になって実験的に新しい重い電子系超伝導体の中にFFLOらしき兆候が見られることの報告が幾つかの実験グループから報告された。それを受けて我々はパウリ常磁性効果を取り込んだEilenberger方程式を数値計算を駆使して解きFFLO状態を安定化させることに成功した。その結果、FFLO状態の詳しい電子構造を明らかにした。特に興味深い結果は以下の通りである。即ち、FFLOの変調ベクトルは磁場方向にあるので渦芯とノード面は直交する。その交点での電子は交点を横切る際に渦芯からの位相シフトとモード面からの位相シフトの両者を同時に感じるための実効できに位相シフトは打ち消す。そのために渦芯における束縛状態がその交点では欠損する。その結果として渦芯にロッド状に蓄積していた磁化がその交点で消失することが分かった。この理論的知見はCeCoIn5の核磁気共鳴実験においてFFLO状態での共鳴線輻に観測されたnormal成分を説明する可能性がある。 更にはTmNi2B2Cの中性子回折実験の理論的解釈、URu2Si2の磁場中比熱の実験の説明等をパウリ常磁性効果を取り込んだEilenberger方程式を解くことで与えた。
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