2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340105
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
町田 一成 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (50025491)
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Keywords | 超流動 / 中性原子気体 / 超伝導 / 量子渦 / 重い電子系 / 対称性 |
Research Abstract |
当年度においては1)中性原子気の超流動の渦の研究、2)超伝導体の磁束格子に研究の二つ研先を平行して遂行した。1)はその内容からフェルミ系とボーズ系の2つに分類でき、それぞれいくつかの研究を行った。1A)フェルミ系は所謂インバランスBCSにおけるFFLO状態の追求を行った。ダイポールトラップされたインバランスLi原子を冷却して超流動転移させたときに安定になるクーパー対は有限運動量をもったFFLO状態が期待される。本研究においてその観測のための実験条件等を詳しく理論的に解析し、実験グループに提供した。現在までのところ、明確なFFLO実現の証拠は残念ながら得られていない。この原因として考えられるのは、系が強結合領域にあるので相関長が短くFFLOに伴う空間変調の長さスケールが短すぎて観測にかからないと思われる。Feshbach共鳴点から離れた中間結合領域での実験が望まれる。1B)中性原子気体の2番目の研究としてボーズ原子系を取り上げた。回転下のBEC中に渦が生成された系の集団励起を調べた。特にKelvin波と呼ばれる、渦芯の振動モードの解析を実行した。このための計算コードの開発とクラスター計算機の整備をこの科学研究費を用いて整えた。励起されたKelvin波の崩壊の様子を計算機シミレーションと物理的考察を交えて解析した。現在はこの継続としてKelvin波とTkachenkoモードの連成モードの研究を行っている。2)超伝導体に磁場を印可したときに生じる量子磁束の諸性質を微視的理論に基づくEilenberger方程式を解くことによって明らかにした。重い電子系の超伝導体であるCeCoIn5やURu2Si2にこれを適用して、超伝導の対称性の決定を行った。比熱の磁場回転の解析から前者はd_xy対称性を持つと結論した。後者については点状ノートと線状ノートとが共存するギャップ構造を持つことを比熱測定の解析から明らかにした。更には後者の系においてはパウリ常磁性効果も重要な働きをしていることも見いだした。これらの結論は他の研究グループによっても裏づけられている。超伝導の磁束格子の配列についても理論計算を実行した。問題は磁場上昇とともに、三角格子から始まって、その配向の一次転移、さらには四角格子へのロックイン転移がいくつかの超伝導体で観測されているが、これを理論的にminimal modelによって説明しようとする試みである。導入した因子としては競合するギャップの異方性とフェルミ速度の異方性である。理論形式は先のEilenerger方程式とGInzburg-Landau理論並びにLondon方程式の3つの方法である。これらの理論形式をそれぞれの適用範囲を考慮しながら展開し、上の課題に取り組んだ。研究は現在も進行中であり、最終結論には未だ至っていないが、本質的には上の二つの因子の競合によって逐次転移が説明できるものと考えている。
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