Research Abstract |
本研究では測定およびフィードフォワードを用いた量子非破壊測定の実現を目指した。量子非破壊測定とは,共役物理量のうち1つに関して情報を得たい系(被測定系)と補助系を量子エンタングルさせ,補助系に対する測定から被測定系に関する所望の情報を得るものである。量子非破壊測定の結果,被測定系の状態は,情報として得られた共役物理量の確定した状態になるが,その共役物理量の値自身は,測定前後で変化はないため,量子非破壊測定と呼ばれている。また,被測定系自身に対する直接測定は行わないため,量子状態が破壊されない(変化はするが)という意味もある。量子非破壊測定は重力波干渉計のような超精密計測には重要な技術で,開発が期待されている。 測定およびフィードフォワードを用いた量子光学的量子非破壊測定の提案は,2005年Filipらにより行われた(R。Filip et. al.,PRA71,042308(2005))。もちろん,提案当時には実現の報告はなかった。この提案では被測定系と補助系をそれぞれ光の単-モードとし,量子エンタングルメントはビームスプリッターと2つのスクイーザー(スクイーズド状態生成器)により生成する。測定としてはホモダイン測定を用い,フィードフォワード系はビームスプリッターと変調器により構成する。ここで,この実験の最も難しく革新的な部分は,任意の入力に対して動作するスクイーザー(ユニバーサルスクイーザー)の実現である。通常,スクイーザーは光パラメトリック発振器(OPO)により実現されるが,不可避な損失により,スクイーズ後の状態の劣化が大きく,ユニバーサルスクイーザーとはなり得なかった。この提案の方法では,OPOを用いて生成したスクイーズされた真空場を補助入力として用い,測定およびフィードフォワードにより,OPOを直接スクイーザーとして用いた場合に比べ,スクイーズ後の劣化を最小限に抑えることが可能となる。つまり,ユニバーサルスクイーザーを実現することが可能となる。 本年度は前年度からほぼ完成していたユニバーサルスクイーザーを完成させ,さらにこれをもう1台作製し,可変ビームスプリッター2つと合わせて,量子非破壊相互作用実験を行った。実験は成功し,種々の量子非破壊相互作用ゲインで実験に成功した。
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