Research Abstract |
ドームふじアイスコアのベリリウム10を分析し, その結果を前年度までに得られた水月湖年縞堆積物のベリリウム10記録と比較した. 双方の記録には, 大まかな変動だけでなく, 詳細な(数百年スケールの)変動にもかなりの類似が認められた. 詳細な変動の類似は, 前年度に行った水月湖年縞堆積物のベリリウム10と炭素14との比較では見られなかったものである. このことは, 最終退氷期の炭素14の生成率変動が, 数百年スケールでは, 全球炭素循環の変化によってかなり消されている可能性を示唆する. 一方で, ドームふじアイスコアと水月湖年縞堆積物のベリリウム10にも, いくつかの細かい不一致が認められた. こうした不一致は, ベリリウム10の降下・堆積過程に関する地域効果で説明できる. 今後は, 全での記録をスタック化するなどして, 地域や核種間の違いを相殺し, さらに信頼できる太陽活動変動曲線を構築することが期待できる. 高時間分解能のベリリウム10記録を年稿堆積物から得る手法を確立するために, 通常は200〜300mg用いられる試料量を, 10mgまで減らした場合の分析法を開発した. これにより, 試料量の軽減と実験時間の短縮が実現し, 年稿堆積物を対象にした, 単年分解能での多数試料分析が可能となった 十和田八戸テフラより産出した1万5千5百年前の古木年輪について, 160年輪分の炭素14連続記録を, 単年輪分解能にて得ることに成功した. 得られた記録に対して, 最大エントロピー法やウエーブレット法により周期解析を行った結果, 太陽活動のSchwabe cycleに相当する約9年の変動周期とHale cycleに相当する約18年の変動周期が検出された. これらは現在の太陽活動変動周期と比べて若干短いものであり, 退氷期の太陽活動変動を解明するための重要な基礎情報となる. また, 同テフラから新たに採取された古木の年輪年代学的分析により, 今後さらに200年以上遡って, 単年輪分解能の炭素14記録を拡張できそうなことも判明した.
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