2008 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子生成機構の解明にむけて : 解離性再結合反応の第一原理シミュレーション
Project/Area Number |
18350001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武次 徹也 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (90280932)
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Keywords | 星間分子 / 解離性再結合反応 / 第一原理シミュレーション / 状態平均CASSCF / スピン多重度 / AIMD計算 / 非断熱領域 / 状態遷移 |
Research Abstract |
星間空間では、陽イオン分子が電子と再結合して中性分子のfragmentへと解離する解離性再結合反応が重要な役割を果たす。陽イオン分子と電子の衝突により生じる中性分子の電子・振動・回転状態は、本来は量子力学的取り扱いにより決定されるべきものであるが、本研究では一般の多原子分子イオンへの適用を考慮し、カチオンの基底状態あるいはRydberg状態と解離性状態との交差点をDR反応の初期状態とする。星間空間は10〜60Kの極低温であるので、陽イオン分子の初期状態は零点振動状態とし、電子との相対衝突エネルギーは0の極限で考える。静電蓄積リングを利用した実験により報告されている生成物分岐比も衝突エネルギーを0としたときの値である。我々は星間分子のDR反応の研究を2002年に始動し、これまでHCNH^+, H_3O^+, HD_2O^+, CH_3^+, (H_2O)_2H^+に対してAIMDシミュレーションを行い、反応機構やダイナミクスの研究を進めてきた。今年度はCH_3^++e^を取り上げ、AIMDシミュレーションを行った。CH_3^++e-の系では、零点振動領域にカチオン基底状態と解離性状態との交差点が存在することが確認されたので、AIMD計算により交差点を探索し、約700点の初期条件を用意してdirect processのAIMDシミュレーションを行った。実験で報告されている4種全ての解離生成物が得られたが、90%の割合でCH2+Hが生成し、実験による分岐比40%を大きく上回る結果が得られた。そこでRydberg状態を経由するindirect processのシミュレーションを行ったところ、より実験に近い分岐比が得られ、交差点が存在する場合にもindirect processの寄与が重要である結果が示唆された。
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