2006 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体の柔軟な電子状態の理論研究-物性と反応性の微視的解明と制御
Project/Area Number |
18350005
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 京都大学, 工学研究科, 教授 (20094013)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 助教授 (70290905)
中尾 嘉秀 京都大学, 工学研究科, 助手 (40362462)
|
Keywords | 電子状態理論 / 遷移金属錯体 / 反応機構 / 結合性 / 構造 / 電子相関効果 / 反応制御 / 機能制御 |
Research Abstract |
遷移金属錯体の柔軟な電子状態が発揮されている反応として、Ni(O)錯体へのH-HおよびMe-CN結合の酸化的付加反応の理論的研究を行った。密度汎関数理論により構造変化を求め、CASPT2,CCSD(T), Beoken-symmetry MP2 to MP4(SDTQ),DFT法でエネルギー変化を求めたところ、CASPT2法およびCCSD(T)法で信頼できるエネルギー変化が得られた。DFT法は活性障壁については良い結果を与えるが反応熱は過小評価された。 現実系についてDASPT2,CCSD(T)計算を行うためのシフト演算子を開発し、Ni(O)キレートホスフィンへのMe-CNの酸化的付加のエネルギー変化を求めた。DFT法による結果は実験結果と合わないが、シフト演算子により置換基の電子的効果を考慮したCCSD(T)計算を行ったところ、実験結果に合致する結果が得られた。また、溶媒効果が重要であることも示された。 遷移金属錯体によるシグマ結合活性化反応として、S架橋W-Ru二核錯体、S架橋Ru-Ge二核錯体によるH2の活性化反応の理論的研究を行った。いずれの場合もRu-S部分によるH2のヘテロリテイックな活性化で反応が進行していること、Ru中心への酸化的付加は困難であること、が示された。 Re二核錯体の結合性と電子状態を、MR-MP2計算により検討した。Re間直接結合を持つ[Re2C18]2-ではRe-Re結合次数が約3.4であり、多配置性の考慮が電子状態の解明に不可欠であることが示された。面共有型Re二核錯体ではd・-d・相互作用とd・-d・相互作用によりRe間結合が形成されていること、Re-Re間結合次数はd3-d4系では3.65、d3-d3系では1.8に減少すること、この意外な事実は交換相互作用と軌道エネルギーの兼ね合いによること、が示された。
|
Research Products
(6 results)