2006 Fiscal Year Annual Research Report
パルス電子-核多重共鳴による分子スピン量子状態の制御
Project/Area Number |
18350015
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐藤 和信 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (90264796)
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Keywords | 量子コンピュタ / スピノール / 量子状態制御 / パルス電子-核多重共鳴 / 量子位相 / 量子情報 / 分子スピン |
Research Abstract |
量子スピン位相制御型パルス電子-核多重磁気共鳴法を電子-核スピン混合(アンサンブル)系に適用し、分子スピンバス量子コンピュータの実現を目的として量子状態制御を目指した。分子スピン系としては、単結晶中に希釈されたマロニルラジカルなどの安定ラジカル分子、及び高スピン分子の電子的基底状態、及び最低励起三重項状態を量子状態制御の対象とした。開殻分子スピン系の開発とともに、多電子スピン分子スピンバス系における量子エンタングルド状態の実験的な検出方法・状態間の変換を確立し、電子-核スピン混在スピン系における量子高密度符号化などの初等量子アルゴリズムの実行するための量子状態変換の実証を行なった。量子エンタングルド状態間の相互変換過程を実験的に検証するために、ユニタリー変換としてENDOR共鳴条件を満足するラジオ波パルスを照射し、パルス幅依存性をHahnエコーを検出することにより読み出した。エコー強度のパルス幅依存性には、核スピン(I=1/2)のスピノールに由来する4π周期性が観測され、量子エンタングルド状態の量子情報変換が行えることを実証した。また、マイクロ波パルスのパルス幅を変化させることにより、電子スピンに由来する量子状態変換を実行した。核スピンの場合と類似の結果が得られ、電子スピン由来のスピノール性を実験的に検出することに成功した。核スピンのスピノール性の実証例は、実験の容易さ故に既に報告されてきたが、本研究において電子スピン(半整数スピン)が持つ固有の量子機能としてのスピノール性を顕な形として初めて実験的に示すことができた。電子スピンの量子位相情報を顕に扱うことができるスピン操作技術及び量子情報処理のためのパルスプロトコルを通じて、量子スピン系の基本的現象を実験的に明らかにし、量子情報処理の過程でスピノール性が顕な形で出現することを示すことに成功した。
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Research Products
(26 results)