Research Abstract |
本研究は,真空中に電子銃と誘電体導波路を配置し,光あるいはミリ波を誘電体導波路中を伝播させ,導波路表面から真空中に染み出した光やミリ波の一部を,電子銃から出射した電子ビームで励振させる増幅器の開発を目指しているものである。平成15年度に光増幅作用を初めて観測したが,増幅率が0.3%と小さく,動作の安定化が課題であった。平成19年度の当初までは,光ファイバを導波路に接続し,入射光を入れて増幅作用の測定を行っていた。しかし,光ファイバを接続するための接着剤を用いているため,導波路表面が炭素で汚染されデータの収集が困難であった。そこで,入射光を用いず,チェレンコフレーザと類似の構造で自然放出光を発生させて放射させる実験に変更した。 導波路としてはIC用のSOI基板の表面Si-SiO2層を用い,電子ビームの加速電圧30KV〜50KVで波長1.5μm付近での光放射が観測した。放射光の波長と電子加速電圧の関係および偏波面依存性は,理論予測と良く一致した。また,この発光が導波路材料自身による発光ではないことも確認した。さらに,発光の波長プロファイルと理論計算との比較から,真空中の電子のコヒーレンス長は約40μmであり,電子の距離間隔に一致していることが判明した。その結果,電磁波の波長が電子のコヒーレンス長より長いミリ波と短い光とでは,電子と電磁波との相互作用のメカニズムに差異があることが判り,新しい動作理論を確立している。 ミリ波についても入射波が無い状態で,電子ビームによる電磁波発生の実験を行った。微弱であるが30GHz〜40GHzでの電磁波発生を観測できた。
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