2006 Fiscal Year Annual Research Report
知的制振構造体としての生体細胞のダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
18360111
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
森下 信 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (80166404)
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Keywords | 動的設計 / 振動特性 / 細胞 / 細胞膜 / 核膜 / クリープ特性 / ART-PCR / タンパク質 |
Research Abstract |
生体細胞は生命を営む生物の基本単位であり,細胞単独もしくは細胞の集合体として周囲の環境に適応し,不要な外界からの刺激を遮断し,かつ細胞内部を生命維持のために常に最適な状態に保っている.細胞は,従来は生物学や生化学の分野で扱われていた対象ではあるが,これを極小の機械として捉えると,今後機械工学分野で開発研究が期待されるマイクロマシンやナノマシンに対して多くの事柄を示唆する対象でもある.しかし,生体細胞の機械的特性,特にダイナミクスについてはほとんど明らかにされていない.本研究は,生体細胞の構造,特に外界からの機械的刺激に対応する各部位の構造・応答に着目して,その特性を機械構造物の制振技術に応用することを最終的な目標としている.今回の申請は全体計画の前半部として,生体細胞の各部の動的特性の把握およびセンシング機構を明らかにすることを具体的な目的としている.平成18年度は細胞膜および核膜の動的特性の同定を行い,さらに本事業で購入したRT-PCRを利用して細胞内部の特定のタンパク質の変化量を測定した. (1)細胞膜および核膜の動的特性の同定 まず,細胞観察で一般的に使用される倒立型位相差顕微鏡に油圧駆動マイクロマニピュレータを一対設置し,それぞれの先端にガラス製のマイクロピペットを取り付ける.培養細胞としてはマウス新生仔頭蓋冠由来の骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1)を使用した.骨関連組織は重力を含む外界からの機械的作用に対して最も顕著に応答すると考えられ,この細胞株を利用したが,最終的な実験では直接動物から採取した細胞を利用してその特性を調査することが好ましい.片方のマイクロマニピュレータをリニアステージ上に固定し,リニアステージをポジションコントローラにより周期的に振動させた.細胞に対する微小な位置調整はマニピュレータの本来の駆動機構を利用し,周期的変位を与えるためにリニアステージを用いるという2重の移動形式を採用した.その結果,細胞膜および核膜の等価な弾性係数に加えて,クリープ特性を測定することに成功した.クリープに対するモデル化はフォークトモデルに加えて減衰を直列に結合する3要素モデルで表現できることが明らかになった. (1)定量的PCRによる機械的刺激に対するタンパク質の変化 PCRは特定のDNAの配列を酵素反応で増幅させる方法として知られている.従来の研究から,細胞はタンパク質を受容体として利用すると考えるのが一般的であるが,機械的刺激の受容体としてのタンパク質の同定が現在までなされていない.本年度はいくつかのタンパク質をターゲットとして,その生成変化量の測定を行った.安定して測定できる技術まで修得したが.まだ当該タンパク質の同定には至っていない.
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