2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本刀のナノ組織を手本にした新しい超鉄鋼材料の開発
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18360349
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
北田 正弘 東京芸術大学, 大学院美術研究科, 教授 (70293032)
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Keywords | 文化財 / 日本刀 / 超鉄鋼 / ナノ構造 / 古代刀 / 室町時代刀 / 透過電子顕微鏡 / 結晶粒寸法 |
Research Abstract |
日本刀は日本の金属文化を代表する世界的な遺産であり、わが国はもとより世界中でその価値が認められている。現在、日本刀は鑑賞を主とするものだが、極めて優秀な鋼といわれている。しかしながら、その材料科学的な研究は約80年前のものだけで、それから分析機器等は著しく進歩したにもかかわらず、最新の先端的な研究は長い間、なされていなかった。本研究は、その材料科学的な詳細を明らかにし、もし、優秀なものであれば現代の鉄鋼業にも参考になると考え、微細組織、機械的性質などの検討を予備的に行っていた。その結果、時代によっては、極めて優れた鋼である可能性が高くなったため、さらに詳細を研究し、その結果を現代の鉄鋼業にフィードバックすることを目的にした研究を提案した。日本刀は文化財として貴重にものであるが、その金属学的な性質と製作手法は謎のままである。本研究では、古墳時代の遺跡から発掘された刀を含め、鎌倉、室町、江戸時代にわたる刀を研究し、そこから新しい知見を得ようとする計画である。18年度は古墳時代刀および室町時代中期に作られた信国吉包作の刀を主に研究した。文化財である日本刀の破壊試験は通常困難だが、試料は本研究者所蔵のものを用いた。古墳時代の刀では、光学顕微鏡サイズの断面構造が硬軟の鋼よりなる縞状組織になっており、この多層構造で丈夫な刀としていることが明らかになった。これを再現するために、小型のたたら吹き炉で鋼を作製した。これを材料にして刀を作成する準備が整い、次年度に刀匠の協力を得て再現試作を行う予定である。また、室町時代の刀を透過電子顕微鏡で観察した結果、刃金と芯金の境界部分に、1-5μm直径の非常に微細なパーライト組織の結晶粒を発見した。これは、現在超鉄鋼の開発として目標にしている結晶粒サイズであり、手工業的方法でも超鉄鋼の製作が可能にことを示し、超鉄鋼を実現するための重要な成果である。
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Research Products
(1 results)