2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本刀のナノ組織を手本にした新しい超鉄鋼材料の開発
Project/Area Number |
18360349
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
北田 正弘 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 美術研究科, 教授 (70293032)
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Keywords | 日本刀 / 超鉄鋼 / ナノ構造 / 鎌倉期日本刀 / マルテンサイト / 微細パーライト / 粒径 / 鍛錬 |
Research Abstract |
日本刀は鉄鋼の文化財として世界に誇り得るものであり、複数の鋼を合わせて合理的な強度として使うなど、中世の技術として傑出したものがある。日本刀の更なる微細構造を解明するために研究した結果、一部に極めて小さな結晶粒子が存在することを見出した。これは数μmの大きさで、現在開発研究されている超鉄鋼と言われる鋼の範疇にある。日本刀は手作りであるが、これを研究することにより、超鉄鋼開発のヒントが隠されている可能性がある。このような背景から、日本刀の微細組織を研究して、超鉄鋼開発の一手がかりを得ることを本研究の目標とした。そのために、先ず、各種の日本刀の微細組織を調べ、その成因を探った。 本年度は鎌倉時代に作刀された名刀といわれる包永(かねなが)、来国次(らいくにつぐ)、備州長船政光(びしゅうおさふねまさみつ)を始めとして、約10振りの刀について微細構造の検討を行った。これらの中で、いくつかの日本刀の刃部、刃と芯金の境界部などで、粒径が約10μmの結晶が存在していることを見出した。これらは超鉄鋼粒径より若干大きいが、現在の工業生産鋼(約30μm)の1/2から1/3である。また、鋼の鍛錬の度合いを示す非金属介在物の寸法と結晶粒径とは比例関係にある。 これらの実験結果から、日本刀の鍛錬、特に刃に使われている鋼は非常に強く鍛錬されており、折り返しの回数も非常に多いと推測される。この鍛錬が高温で長時間に及ぶならば結晶成長が起こって粗大になるので、鍛錬が可能なぎりぎりの温度で、かつ、短時間の鍛錬が行われたものと考えられる。
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Research Products
(2 results)