Research Abstract |
本研究は,光路長に温度依存性のないガラス(アサーマルガラス)を多元系シリケートで見出すことを目的としている。平成19年度の研究では, SiO_2-B_2O_3系は高温下で長時間保持すると分相の影響により表面が粗くなるため,屈折率測定ができないことが問題となった。そこで,本年度は, Na_2OとTiO_2を加えたTiO_2-Na_2O-B_2O_3-SiO_2系ガラスの屈折率と線膨張係数の測定を行うこととした。18年度の研究より, Na_2O添加は屈折率を増大させる効果があるものの,その温度係数は負になることがわかっている。また, TiO_2添加は,線膨張係数を減少させることが報告されている。したがって,それぞれの添加成分の影響を組み合わせ,低融点のアサーマルガラスの作製を試みた。 試料組成は, xmo1%SiO_2-yTiO_2-zNa_2O-(100-x-y-z)B_2O_3(x=50〜60, x+y+z=95, 100)とした。屈折率の測定波長は632.8nm,屈折率と線膨張係数の測定温度範囲は室温〜約650Kとし,大気下で測定を行った。 測定したガラスでは,測定温度範囲において分相の影響がなく,屈折率を測定することができた。屈折率および線膨張係数は, B_2O_3よりもTiO_2の濃度によって大きく変化した。 TiO_2を添加すると,屈折率,その温度係数および線膨張係数はいずれも増加した。すなわち,アサーマル化とは逆の傾向を示した。屈折率に対するTiO_2濃度依存性は,今回作製したSiO_2濃度では, Tiイオンが6配位構造をとることが原因であると考えられる。SiO_2濃度を増加, TiO_2濃度を低下させることで, Tiイオンは4配位構造をとるようになるため,屈折率およびその温度係数は変化する可能性がある。また,線膨張係数に関しては, Na_2Oの存在により, SiO_2-TiO_2二元系の報告例とは逆の結果が得られたと考えられる。
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