Research Abstract |
本研究は,光路長(S)に温度依存性のないガラス(アサーマルガラス)を多元系シリケートで見出すことを目的としている。 l^<-1>dS/dT=nα+dn/dT(1) ここで,l,T,nおよびαは,それぞれ,試料長さ,温度,屈折率および線膨脹係数を示している。平成20年度は,試料組成をxmol%SiO_2-yTiO_2-zNa_2O-(100-x-y-z)B_2O_3(x=50~60,x+y+z=95,100)として屈折率と線膨脹係数の測定を行い,以下のことがわかった。屈折率および線膨張係数は,B_2O_3よりもTiO_2の濃度によって大きく変化する。TiO_2の添加により,屈折率,その温度係数および線膨張係数はいずれも増加する。これは,アサーマル化とは逆の傾向を示している。作製したSiO_2濃度では,Tiイオンが6配位構造をとるために,屈折率はTiO_2濃度とともに増加したと考えられる。そこで,SiO_2濃度を増加,TiO_2濃度を低下させることで,Tiイオンは4配位構造をとるようになるため,屈折率およびその温度係数は変化する可能性があることを見出した。この結果に基づき本年度は,試料組成をxmol%SiO_2-yTiO_2-(100-z-y)Na_2O(x=60~80,y=5~25)として屈折率および線膨脹係数の測定を行った。測定温度範囲は室温~約650Kとし,大気下で測定を行った。いずれの試料においても屈折率および線膨脹係数はSiO_2よりも大きな値を示した。一方で,dn/dTはSiO_2よりも小さい値が得られた。これは,Na_2Oの影響である。測定結果を用いて,式(1)に基づき各試料のアサーマル性を評価したところ,80SiO_2-5TiO_2-15Na_2Oは,SiO_2と同程度のdS/dTを持つことが分かった。このガラスは,SiO_2よりも融点が低いため,製造コストの削減が期待でき,SiO_2に替わるアサーマルガラスの候補となると考えられる。
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