2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18370027
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水波 誠 東北大学, 大学院生命科学研究科, 助教授 (30174030)
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Keywords | 薬理学 / 脳・神経 / 昆虫 / 行動学 / 条件付け / 学習 / 記憶 / 生体アミン |
Research Abstract |
本研究の目的は、昆虫の脳には、様々な種類の学習においてその連合過程に共通して働く「報酬系」や「罰系」と呼べる神経システムが存在する、という研究代表者の仮説を実験的に検証することである。 研究代表者はフタホシコオロギの嗅覚学習において報酬条件付けにはオクトバミン作動性ニューロンが、罰条件づけにはドーパミン作動性ニューロンが関わることを見いだしている。そこで本年度は、この発見が視覚的なパターン(模様)の学習にも一般化できるかについて調べた。オクトパミンおよびドーパミン受容体阻害剤を血中投与したコオロギに、視覚的なパターン(模様)を水(報酬)または塩水(罰)と連合させる条件付け訓練を行った。訓練の1時間前と1時間後にパターン選択テストを行い、条件付けが成立しているかを調べた。その結果、パターン学習においても、オクトパミン受容体阻害剤は報酬条件付けを阻害するが罰条件付けには影響を与えないこと、またドーパミン受容体阻害剤は罰条件付けを阻害するが、報酬条件付けには影響を与えないことがわかった。 さらに、嗅覚学習と視覚学習の両方において、学習の1日後の記憶読み出しテストの30分前にオクトパミンまたはドーパミン受容体阻害剤阻害剤を投与し、これらの阻害が記憶の読み出しに影響するかを調べた。オクトパミン受容体阻害剤は報酬記憶の読み出し阻害したが、罰記憶の読み出しには影響を与えなかった。またドーパミン受容体阻害剤は、罰記憶の読み出しを阻害したが、報酬記憶の読み出しには影響を与えなかった。これらの結果は、オクトパミン作動性ニューロンおよびドーパミン作動性ニューロンがそれぞれ報酬記憶および罰記憶の読み出しに関わる事を初めて明らかにしたものである。
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