2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18370027
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水波 誠 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (30174030)
|
Keywords | 薬理学 / 脳・神経 / 昆虫 / 行動学 / 条件付け / 学習 / 記憶 / 生体アミン |
Research Abstract |
本研究の目的は、昆虫の脳には、様々な種類の学習においてその連合過程に共通して働く「報酬系」や「罰系」と呼べる神経システムが存在する、という研究代表者の仮説を実験的に検証することである。初年度の研究により、オクトパミン作動性ニューロンおよびドーパミン作動性ニューロンがそれぞれ報酬記憶および罰記憶の読み出しに関わる事が示唆された。これは、従来の昆虫の学習モデルでは説明できなかった。 そこで本年度は、この現象を説明するための新たなモデル(水波-宇ノ木モデル)を提案し、その検証実験を行った。具体的には、条件付けにより、脳内の匂いの情報を表現するニューロンと報酬や罰の情報を表現するニューロンとの間にシナプス接続が形成され、その経路の活性化が、記憶の読み出しには必須であるというモデルである。 このモデルを2次条件付けという学習法を用いて検証した。2次条件付けとは、CS1とUSとの対提示の後に、CS2とCS1を対提示すると、CS1に対しても条件付け効果が見られるというものである。もし水波-宇ノ木モデルが正しければ、2次条件づけの第一段階においてオクとパミンやドーパミン受容体を阻害しても、2次条件付けは成立することが予想された。 そこで、匂いをCS1、視覚的な模様をCS2とする2次条件付け法を開発し、薬理実験による解析を行ったところ、モデルを支持する結果が得られた。 このモデルは、昆虫の古典的条件づけにおいて、外界の出来事の「内部モデル」が形成されることを初めて示唆するものであった。 さらに、色学習にもオクトパミン作動性の報酬系、ドーパミン作動性の罰系が関わることを、行動薬理実験により明らかにし、昆虫の学習における報酬系、罰系の役割の普遍性を示した。
|