2006 Fiscal Year Annual Research Report
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18380027
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
内田 和伸 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 文化遺産部, 主任研究員 (30249974)
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Keywords | 平城宮跡 / 大極殿院 / 遺跡整備 / 遺跡の活用 / 設計思想 / 顕彰 / 第一次大極殿院 / 宇宙 |
Research Abstract |
平城官跡で第一次大極殿の復元事業が進んでいるが、遺跡は対者を復元するだけでは理解に十分ではない。韓国ソウルの景福宮では守門将の交代儀式などが復興され、教育的効果をあげているだけでなく、観光にも役立っている。そのため、儀式を運営している韓国文化財保護財団を訪れ、担当者に実務の現状と問題点などをヒアリングした。その成果は下記にまとめた。さらに、このような事例を国内の関係者と意見交換すべく、彼らを招き研究会を行った(2007.2.22)。この研究会では平城宮で奈良時代に行っていた騎射の儀式にっいて、場所や内容を続日本紀から確認し、平安時代の儀式書を参考にして儀式の次第を復元考察した、芳之内圭・内田和伸論文「五月五日節会の復興に関する研究」を報告した。また、研究会では、下鴨神社などで実際に騎射(流鏑馬)を行っている弓馬術礼法の小笠原流の射手を招き、かつて行われていた可能性の高い平城宮朝堂院南門や朱雀門で実際に行うことができるか現地を確認してもらい、サラブレットでなければ距離が短くても済むため可能であるとの指摘を受けた。事業主体の決定などの確定が実現に向けての課題であることが確認された。 平城官第一次大極殿院については、設計思想の点からいくつかの考察を行い、第一次大極殿前の博積擁壁は宇宙の構造を象るものであること発表した。特に、その高さは8尺で3尺転ぶ勾配をもっていることに関して、古代中国思想(飛烏時代に日本にも導入されている陰陽五行思想)では両数字とも三足烏の八咫烏に関わると同時に、日の正位である東の方位に関わるものであること、擁壁の折れ曲がる平面形も八咫烏に関わることなどを指摘した。平城宮に2つある朝堂院については、中央区の4堂院と東区の12堂院について、2つの朝堂院は太微宮を象ったものであるとの見解を示した。前者の正殿は第一次大極殿院南門であり、その特異な利用形態を考慮すると5堂として捉えてもよいものであること、『晋書』天文志に「太微、天子庭也、五帝之坐也、十二諸侯府也」とあり、太微宮は天子の庭であり、五帝の座であり、十二諸侯府とされたことが根拠となる。 古代の国庁の配置計画にいかなる設計思想があるかを検討するために、報告書の整理と遺構図の貼り合わせ作業を行い、次年度の検討材料とした。
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Research Products
(6 results)