2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18380027
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
今井 晃樹 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60359445)
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Keywords | 平城宮 / 大極殿 / 高御座 / 遺跡整備 / 活用 |
Research Abstract |
研究費の補助を受けた平成18-21年度の研究を科研報告(全355頁)にまとめた。 研究目的に合わせた報告書の構成としている。第一部は平城宮第一次大極殿院の発掘調査成果をもとに、宮殿は宇宙を象るということを実証した。具体的には、大極殿と後殿が立つ大極殿院の北約3分の1の範囲は、南の玉砂利の広場より約2.4メートル高い壇になっていた。臣下らは一段低い南の広場に整列し大極殿内の高御座に座す天皇を拝した。この壇の東西には広場から壇に上がる斜路があり、壇の正面と斜路の側面には博(せん)と呼ぶレンガを表面に積んだ〓積擁壁があった。その〓積擁壁の平面形は屈曲する奇妙な形で、これを決めるのに、大極殿の中心の少し北側(高御座の位置)を中心に同心3円を描き、後殿前の点を中心にした偏心円との交点などを用いていることが分かった。ちょうどキトラ古墳の天文図に描かれる同心3円と偏心円の関係と同じである。中国の史書や『文選』を検討すると、始皇帝以来古代中国の宮都は宇宙を象るという思想があり、宮都の造営にあたっては、易や天文、暦、算術、地理(風水)など術数と呼ばれる知識体系が使われた。日本では陰陽寮が術数を使い、大極殿院の造営に関わったと推定した。第二部では、こうした思想を意識した上で、高御座を構想するとどのようになるか、〓積擁壁はどのように整備すべきかを検討した。また、明治27年の平安遷都1100年を契機に、大極殿跡などの宮跡の保存と顕彰が各地で行われるようになり、宮跡の保存と顕彰は政治的な課題となったことを明らかにした。第三部では、宮都の造営が思想的には陰陽の調和、五行の循環を通して安寧を求めるものであり、そこで行われる年中行事もその手段だったことから、遺跡の活用プログラムとして年中行事を再現する検討を行った。第四部は、関連する研究の論集である。
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Research Products
(3 results)