2006 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系における大型植食者による生物多様性維持機構の実験的解明
Project/Area Number |
18380086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (60285690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日浦 勉 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (70250496)
宮本 敏澄 北海道大学, 大学院農学研究院, 助手 (00343012)
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Keywords | 大型植食動物 / 採食圧 / 植物生産性 / 生物間相互作用 / 森林生態系 / 生産者 / 消費者 / 分解者 |
Research Abstract |
北大苫小牧研究林内の約25haにおいてシカ密度と林床植物の生産性を操作する二因子実験を組み、大規模野外操作実験を行った。シカの密度操作は柵を用いて高密度区(20/km^2)・低密度区(約5-10/km^2)・排除区(0/km^2)の3段階設定した。植物生産性操作は、2005年春に施肥(窒素添加)と択伐伐採(光条件が好転)によって行った。3つのシカ密度操作ごとに4つの処理区(施肥、伐採、施肥伐採+無処理)を反復して設置した。各処理区において林床植物を対象に、シカによる被食率、植物の多様性、植物高、開花率の調査を7-8月に行った。また、物質循環に与えるシカの影響をみるために土壌サンプルを採取し、土壌中の全窒素量を測定した。 林床植物の被食率はシカ密度が高いほど増加した。被食率は伐採区と伐採+施肥区で有意に増加した。これは伐採処理で、林床植物の生産性が増加し、シカがそこで集中的に採食したためと考えられた。一方、林床植物の種数・シャノン指数、シンプソン指数に対してシカ密度間では有意な差はみられなかった。なお、シカの密度が高いほど土壌中の窒素量は減少した。このことから、シカにより栄養塩循環が促進される可能性が示唆された。生態系エンジニアとして注目されているミミズ類の生物量を各処理区において調査した。その結果、ミミズ類の生物量はシカ密度や施肥の影響は受けておらず、伐採操作によって有意に減少していた。今後、植生や土壌、落葉量などのデータを合わせて分析することで、減少の要因を明らかにする予定である。シカ排泄物の分解過程、さらに、シカ排泄物が森林内の物質循環に与える影響を明らかにすることを目的として、シカ排泄物と落ち葉を混合したリターバッグを林内に設置した。今後、分解過程、および微生物群集組成の変化の観察を継続する。
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Research Products
(6 results)