Research Abstract |
2,2,6,6一テトラピペリジニル-1-オキシラジカル(TEMPO)を触媒量用いる水系媒体での,プルラン,カードラン,キチン,各種セルロースの酸化化学改質について詳細に検討した。特に,従来の次亜塩素酸ナトリウム-臭化ナトリウム-TEMPO系pH10での反応に対して,亜塩素酸ナトリウム-TEMPO系pH4〜7の弱酸性〜中性条件でのTEMPO触媒酸化反応条件について,温度,pH,反応時間と,導入された酸性基量,収率,重合度変化について重点的に検討した。その結果,従来法では少量のアルデヒド基が中間体として生成するため,pH10の条件では副反応であるβ脱離による顕著な重合度低下が避けられない。また,少量のアルデヒド基は熱乾燥過程でTEMPO触媒酸化多糖の着色の原因にもなる。一方,亜塩素酸ナトリウム-TEMPO系pH4〜7の新しい酸化反応では,中間体として生成したアルデヒド基は速やかにカルボキシル基に酸化されると共に,反応系が中性〜弱酸性であるので,β脱離反応を避けることができる。実際,カードラン(元の重合度は約6700)では従来法では重合度80程度にまで低下するのに対して,亜塩素酸系TEMPO酸化では1000程度になる。従って,低濃度でも十分に高粘度の水溶液となる。また,再生セルロースに適用した場合では,従来法で重合度40程度が,亜塩素酸系TEMPO酸化では220程度になる。更に,天然セルロースに,本亜塩素酸系TEMPO酸化を適用した場合には,高重合度で長さが数ミクロン以上の極めて長いセルロースシングルナノファイバーが得られることが判明した。現在,本亜塩素酸系TEMPO触媒酸化をキチン等の他の多糖類にも適用し,得られた酸化物の構造および機能解析を進めている。
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