2009 Fiscal Year Annual Research Report
グリオーマ誘発レトロウイルスの神経病原性発現機構の解明
Project/Area Number |
18380179
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
落合 謙爾 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (80214162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (90250498)
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Keywords | トリ / グリオーマ / 中枢神経系腫瘍 / 発癌機構 / レトロウイルス / トリ白血病ウイルス / トランスジェニックニワトリ |
Research Abstract |
研究代表者は「トリのグリオーマso-called fowl glioma」がA型トリ白血病ウイルス(ALV-A)感染症であることを明らかにした。本課題の目的はトリのグリオーマ原因ウイルス(FGV)の神経病原性発現機構を解明することである。今年度は以下の成績が得られた。1.FGV-LTR導入トランスジェニックニワトリ1系統(GO世代)を作出した。2.FGV-long terminal repeat(LTR)と結合する転写因子が末梢神経組織に多量に存在することがわかった。3.採卵鶏由来グリオーマ誘発ALV,TymS_<90>株の近縁株が日本鶏に感染していることが新たにわかった。4.FGV近縁株22株のうち,4株(Tym-43,U-1,Sp-40,Sp-53)のウイルスゲノム全長の塩基配列を比較した後,感染実験により神経病変を解析した。4株のgag,pol,3'LTRはFGVのそれらと93%以上の相同性を示し,各領域の分子系統樹ではいずれも同一のクラスターに属した。一方,envSUはFGVと85~95%の相同性を示し,Sp-40とSp-53はFGVとは異なるクラスターを形成した。感染実験ではいずれの株もグリオーマや小脳低形成を誘発したが,その頻度と程度に差がみられ,Sp-53が早期に最も重度な病変を誘発した。また,ALV由来ウイルスベクターRCAS(A)のenvSUをFGVのそれに置換したキメラウイルスは神経病原性を示さなかったことから,envはFGVの神経病原性の主な規定因子ではないが,神経病変の頻度と程度に影響を与えることが示唆された。総括すると,本課題ではFGVとTymS_<90>の分子生物学的共通点からALVの神経病原性の分子基盤解明を目指したが,2株の共通点は見出されなかったため,今後はALVの多様性を明らかにしたうえで遺伝子組換え体による病原性解析が必要であると考えられる。
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Research Products
(3 results)