Research Abstract |
本研究では,ベトナム・ハノイにおいて,農耕地土壌・環境水の有害金属および有機塩素系農薬による汚染調査を実施するとともに,植物を用いた浄化・修復技術を検討することを目的とした. 平成20年度は,昨年度,紅河流域の園芸地帯で採取した畑作物可食部中の残留農薬分析を行った.Kohlrabiの可食部からは高濃度のcypemethrinsが検出されたが,それ以外の農薬については,土壌中にDDT類の残存が確認された場合でも,作物可食部からベトナムの基準値を超える農薬は検出されなかった.一方,2008年9月14日〜24日に,ハノイ北部のThanh Hoa県のクロム鉱山を再度訪れ,鉱山周辺の水田で生育調査を行うとともに,収穫期の水稲植物体を採取し,重金属吸収量の分析に供試した.今後,分析結果をもとに,水稲の分析から土壌の重金属汚染状況を把握できないか検討を行う,また,昨年度の研究で,根での鉛蓄積が観察されたBidens pilosaについて,根の切片をロジソン酸ナトリウムで染色し鉛の分布を観察したところ,外皮部分ではなく導管部分に染色が観察されたことから,根での鉛の蓄積は,単なる吸着現象ではないと考えられた. さらに,今年度が本研究の最終年度であることから,2008年9月15日にハノイ科学大学において国際セミナーを開催し,これまでの研究成果を公表した.ハノイ科学大学化学部からは,有害物質汚染水の浄化技術等に関する研究成果の発表があった.このセミナー発表を踏まえ,本研究全体の成果として,(1)ベトナム・ハノイ近郊の鉱山周辺土壌における重金属汚染の実態とその対策,(2)紅河流域の畑土壌における農薬残留の実態,(3)植物を用いた重金属汚染土壌の浄化の実現を目的とした基礎研究,についてとりまとめを行った.
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