Research Abstract |
メチル化遺伝子プロファイリング: 遺伝子プロモーター領域のCpG繰り返し配列のシトシンにメチル化がおきると,転写が抑制され,遺伝子発現に大きな影響を与える.胃癌で高頻度にCpG部位にメチル化が生じている5つの遺伝子(LOX,HRASLS,FLNc,HAND1,TM)を指標として,胃癌106例をメチル化遺伝子数0.1-3,4-5個でCpG island methylator phenotype(CIMP)N型(null),I型(intemediate),H型(high)に分類した.EBウイルス関連胃癌(14%)は15例中14例がH型で均一な一群であった.陰性胃癌ではN型24%,I型38%,H型24%であった.次いで癌関連遺伝子10個(p14,p15,p16,p73,TIMP-3,E-cadherin,DAPK,GSTP1,hMLH1,MGMT)のメチル化について検討したところ,EB胃癌では平均6.9個にメチルがみられ,陰性胃癌N型,I型,H型での平均個数1.8,2.0,3.5に比べ有意に高頻度であった. 周囲粘膜における変化 CIMP-H型の胃癌周囲の非腫瘍性粘膜でもDNAメチル化が亢進しているという報告もみられる.このため,EBウイルス関連胃癌の周囲胃粘膜でDNAメチル化の頻度を検索したところ,陰性胃癌の周囲胃粘膜と差はなく,いずれも低頻度であった.また周囲胃粘膜のメチル化の頻度と慢性炎症の程度の間には関連性が見られなかった.以上の事実から,EBウイルス胃癌の場合には,DNAメチル化の亢進はEBウイルス感染に伴って引き起こされる異常であると考えられる(Ushiku et al.in preparation). EBウイルス感染系によるメチル化促進機構の解析: EBウイルス関連胃癌におけるメチル化亢進の分子機構を調べるため,EBウイルス感染胃癌細胞株を樹立し,検討を加えている. EBウイルス潜在期蛋白トランスジェニックマウスによるメチル化促進機構の解析: EBウイルス潜在期遺伝子を胃に特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成し,発癌過程を解析する.胃特異的発現のため胃壁細胞特異的H^+K^+-ATPaseプロモーターを用い,その下流にLMP2a,EBNA1遺伝子を結合させた組み換えベクターを構築した.マウス受精卵にinjectionした後,分割した受精卵の移植を行った段階である.胃における発現を確認し,継時的に粘膜上皮におけるメチル化状態の変化を解析する予定である.
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