Research Abstract |
水疱性類天疱瘡(BP)は,高齢者に高発する最も頻度の高い自己免疫性水疱症であり,全身に表皮下水疱が多発する重篤な疾患である。本症患者の血清中には,皮膚の基底膜を認識する抗基底膜抗体(BP抗体)が存在する。本研究の目的は,遺伝子改変マウスを用いて,水疱性類天庖(BP)患者に存在する自己抗体の病原性を直接証明すること,並びに,BP抗原のepitope(抗原決定基)に一致するペプチドをdecoy(おとり)として投与する,エピトープデコイ(epitope decoy)という新規治療戦略を開発することにあった。 その結果,BP抗原KOヘテロマウス(マウスBP+/-,ヒトBP-)とTGマウス(マウスBP+/+,ヒトBP+)を交配することにより,ノックアウトマウスのヘテロでありながら,トランスジーン(ヒトのBP抗原遺伝子)を受け継いだマウス(マウスBP+/-,ヒトBP+)を作成した。ヒトBP抗原により救済され,KOマウスの皮膚症状が消失した。交配で得られたBP抗原ヒト化マウスの表現型を週齢に従い,詳しく解析した結果,230kD類天疱瘡抗原の発現の低下が認められたが,その他の基底膜蛋白は,正常であった。今回で研究では,最終的に接合部型表皮水庖症のモデルであるBP抗原のノックアウトマウスの表皮細胞に,正常の遺伝子が導入されることになるので,遺伝子治療の有用性が証明された。 次年度の研究の準備として,北大皮膚科に保存しているBP患者血清のBP-ELISA,ウエスタンブロットを行い,BP抗原への自己抗体を有する血清を選択した。さらに,その血清からプロテインGカラムを用いてIgGを精製した。それらの抗体を先ず正常のマウスに投与して,実際に皮膚に沈着しないことを確認する予定である。
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