2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体肝移植における過小グラフトの血行動態に関する臨床研究
Project/Area Number |
18390370
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
川崎 誠治 順天堂大学, 医学部, 教授 (80177667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 陽一 順天堂大学, 医学部, 講師 (20260490)
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Keywords | 生体肝移植 / 肝血行動態 / 過小グラフト / 門脈血流 |
Research Abstract |
生体肝移植において私どもの教室ではドナーの安全性を考慮し、一貫して左葉グラフトを用いている。左葉グラフトは右葉グラフトに比べ容積が小さく、移植後に過剰な門脈血流負荷がかかりグラフト障害の原因になるとする報告がある。しかしながらグラフトサイズの基準は明確なものではなく、左葉グラフトでも良好な成績が報告されている。左葉グラフトにおける移植前後での肝血行動態の変化に関する詳細な検討を行った。 対象と方法 2004年1月から2006年12月までに行った生体肝移植23例中成人生体肝移植18例(18歳以上)を対象とした。グラフトは全例で尾状葉を含まない左葉グラフトを用い、グラフト容積(GV)の標準肝容積(SV)に対する比(GV/SV比)が30%以上を左葉グラフトの適応基準とした。門脈血流の調節のために脾摘、門脈下大静脈シャント作成等は施行しなかった。12例においてトランジットタイム超音波血流計を用いた肝動脈、門脈血流測定を行った。ドナーでは肝離断開始前、レシピエントでは胆道再建前に血流を測定した。 結果 肝血行動態の変化 GVは402±769(range:280g-570g)、GV/SV比は37.6%±5.6%(range:26.1%-46.5%)であり、14例中9例でGV/SV比が40%以下であった。再潅流後の門脈血流量はドナーの門脈血流量より増加した。一方で肝動脈血流量には有意な変化は認められなかった。全肝血流量に対する門脈血流量の比率は移植後に92%と著明に上昇した。GV/SV比と100gグラフト重量当たりの門脈血流量に弱い負の相関が認められた。 術後グラフト機能の評価 移植2週間後にほとんどの症例で肝機能の回復が認められたが、14例中2例でAST上昇の遷延、3例で総ビリルビン値上昇の遷延が認められた。C型肝炎の再燃、拒絶反応、感染症が原因と考えられたいずれも適切な治療により回復した。術後2週間の腹腔ドレーンからの1日排液量の平均が1リットル以上認められた症例が5例あったが、最終的には全症例で腹水が減少し、ドレーン抜去可能となった。14例全例生存中である。 結語 左葉グラフトはGV/SV比40%以下のグラフトとなる可能性が高く、グラフトへの門脈血流量も多量であることが多くなるが、適切な術後管理により良好な生存率が期待でき、グラフト選択肢として重要と考えられた。
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Research Products
(2 results)