Research Abstract |
癌治療において,副作用が少なく放射線や化学療法剤に抵抗性を示す癌腫にも効果があるとして免疫療法が注目されている。これまでの研究において,我々は,癌免疫療法剤(BRM)の効果発現に,Toll様受容体(Toll-like receptors:TLRs)を介したシグナル伝達系が重要な役割を演じている事を強く示唆する結果を得ている。本年度は,前年度に引き続き,健常人ならびに頭頸部癌患者の末梢血単核球(peripheral bloodmononuclear cell:PBMC)において,TLR関連遺伝子の解析を行なった。15名の健常人では,すぺてTLRシグナルは正常であったのに対し,50名中9名の口腔癌患者由来PBMCでは,TLR関連遺伝子の欠如(TLR2,TLR4,TLR9,MD-2)が認められ,特にTLR4あるいはMD-2の欠損あるいは発現低下を認めた6症例では,下流のシグナルの不活化(転写因子NF-_κB,IRF3の不活性化,MAPK群のリン酸化の低下)が認められた。50例の口腔癌患者は全て,免疫療法剤OK-432を含む治療を行われているが,TLR4あるいはMD-2の欠損あるいは発現低下を認めた6症例はすべてOK-432が反応せず,良好な治療効果が得られなかった。TLR4あるいはMD-2遺伝子が欠損したノックアウトマウスを用いた動物実験において,野生型マウスでは,OK-432はIFN-γを誘導し,抗腫瘍効果を発現したが,TLR4あるいはMD-2遺伝子ノックアウトマウスにおいては,OK-432はこれらの抗腫瘍免疫活性を示さなかった。In vitro実験において,TLR4あるいはMD-2を欠損したリンパ球にこれらの分子の遺伝子導入を行うことによって,OK-432等の免疫療法剤に対する反応性を獲得し,抗腫瘍免疫活性を発現した。OK-432等の免疫療法剤BRMの活性発現には,特に,TLR4を介したシグナルが重要であり,免疫療法剤に反応しない患者には,これら分子の遺伝子導入が効果的であることが強く示唆された。
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