2006 Fiscal Year Annual Research Report
モンスーン・アジアにおける農業・食料システムの災害耐性に関する研究
Project/Area Number |
18402004
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下渡 敏治 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00120478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 秀樹 明星大学, 経済学部, 教授 (80151827)
ロイ キンシュク 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (10339294)
長坂 貞郎 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70318385)
宮部 和幸 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (40409066)
高樋 さち子 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (00261644)
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Keywords | モンスーンアジア / 自然災害 / 台風 / 早魃 / 農作物 / フィールド調査 / 災害耐性 |
Research Abstract |
平成18年度は3つのグループに分かれて中国、タイ・カンボジア・ベトナム、バングラデシュの各国を対象に主に現地行政機関、研究機関、大学等において基礎的資料の収集と関連情報収集のためのインタビュー調査を実施した。さらに自然災害が多発している中国南東部、内モンゴル白治区、カンボジア・プノンペン周辺、ベトナム・カントー地区、バングラデシュ内陸部においてフィールドでの実態調査を実施した。フィールド調査を実施する直前の8月上旬には、中国南東部の福建省や広東省などで大規模な台風被害が発生し、また現地実態調査で中国訪間中にも内陸部の重慶市で40度を超える高温とそれによる早魃で死傷者や農業への被害が発生するなど自然災害が猛威を振るった1年であった。こうした自然災害の発生は中国のみならず東南アジアや南インドのバングラデシュにも共通した現象であり、それがモンスーン・アジアに特有の季節的な集中降雨によるものか異常気象によるものか早魃・乾燥によるものかの相異はあるものの、今回の現地調査によって、周期的な自然災害によって調査対象地域の農地や農作物が大きな被害を被っていることが確認された。しかし農業・食料システムへの影響と被害の状況については現時点では部分的、定性的な実態把握に止まっており、全体的、定量的な被害状況の実態把握と分析は次年度以降の課題である。さらに年度末には共同研究者5人による沖縄県宮古島での自然災害のフィールド調査を実施した。この調査は当初予定していなかったものであるが、中国南:東部、台湾、バングラデシュなどにおいて台風による農業・食料生産への被害が大きいことなどから、台風被害とその対策では研究対象地域に比べて多くの経験と蓄積を有する沖縄県の事例について検証しておく必要を強く感じたからである。沖縄でのフィールド調査ではこの地域に広く分布し古くから栽培されているサトウキビが台風に対して強い災害耐性を有することが明らかとなった。同時に、自然条件を無視した農地の区画整理や道路の建設などの行き過ぎた開発が台風や降雨時に農地の表土を流出させるなどの自然災害を拡大させている事実が明らかとなった。研究対象地域のモンスーン・アジアにおいても持続的な経済発展によって工業化・都市化が急速に進展すると共に、都市の周辺はもとより農村部においても工場の進出や宅地の開発が進展し、農地の転用、森林の伐採による大規模な農地造成や工業団地の建設など自然環境への配慮を欠いた開発優先の経済政策が自然災害による被害を増幅させていることも事実である。以上、平成18年度は研究対象地域の自然災害と農業・食料システムの相互関係に関わる基礎的資料・関連情報の収集および研究対象国の自然災害の内容と被害状況、発生原因についての実態把握に重点をおいた調査研究を実施すると共に、中国、タイ、マレーシア、カンボジア、ベトナム、バングラデシュの各国において次年度以降のフィールド調査の拠点となる地域を選定し、初年度の目的をほぼ達成した。
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Research Products
(7 results)