2006 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア大陸部地方都市華人の地域間移動に関する実証的研究
Project/Area Number |
18402030
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
荒井 茂夫 三重大学, 人文学部, 教授 (00159477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 慶子 北九州市立大学, 法学部, 教授 (90197575)
田中 恭子 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00167496)
加納 寛 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 助教授 (30308712)
福田 和展 三重大学, 人文学部, 助教授 (10324500)
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Keywords | 華裔・華人 / 華人社会 / 華人文化 / 華人歴史 / 東南アジア華人 / 社会学 / カチュラル・スタディーズ / 移民 |
Research Abstract |
平成18年度は基礎調査を進めた。8月のタイ調査では、まず華人の同化の様相に関わる実感について聞き取りを行い、すでに華裔であることを意識しない、華語や方言も話せない、いわゆるルークチーン人口の拡大が顕著であることを実感した。これは河辺利夫先生がかつてタイ華人の同化論について指摘した傾向と合致するものである。歴代首相や軍・警幹部層に占める華裔の多さ、大学生の半数以上が華裔であると言われることなど、また王妃も李姓の華裔であると言われることなど、みなタイ華人の同化融合論の証左となる回答を得た。ただ混血同化しない華人、また混血して且つ華人性を保持固執する華裔の広がりは、やはり中国の台頭とともに顕著になっていて、華語教育を振興し、宗親総会(同族団体の全体組織)の活動も活発であった。河辺先生の同化論が決して現実ではないことを示している。申請者の2元論的華人意識の実態は、アンケートの分析を待つ。 同8月にメルボルンで行った調査では、ベトナム難民華人社会の成り立ちを知見し、人的紹介を確保した。彼らはシドニー市外環の旧難民収容所近くのキャンベラマタにシドニー市内の歴史的チャイナ・タウンよりも大きなチャイナ・タウンを形成している。定住難民の彼らはすでに市民権を獲得してから28年近く経過し、成功した企業家も少なくない。彼らの多くがベトナムに投資したり、貿易を行ったりしている。またメルボルンでは華語によるテレビの放送枠を持ち、そのインタビューを受けた。彼ら難民第1世代は互助組織から出発して、伝統的華人社団と同様の組織を形成している。インドシナ難民互助会が大枠の組織として機能している。また香港を中心とするベトナム華人の団体組織や、アメリカのベトナム難民華人団体などとの連絡網を実地に体験した。即ちそのルートに従ってベトナム(ホーチミン市)での初動調査を行うことが出来たのである。ベトナム華人は、やはりベトナム人としての意識が顕著である。と同時に中国性の保持は華語教育によって確保されている。香港に居住する者はホーチミンに投資したり、住宅を購入する者が多い。同化傾向は特に農村部で強い。 マカオにはミャンマー難民華人互助会があり、海外ミャンマー難民華人の中心になっている。メルボルンやシドニーとも連絡がある。ミャンマー華人はベトナム華人と同じく、政治的な圧力を常に受け、華人文化は萎縮している。両者の違いはベトナムでは、華字紙「開放日報」が共産党機関誌として発行され、メディアとして華語が存在するが、ミャンマーでは全面的に華字紙の発行は許されていない。ミャンマー北部マンダレーは、雲南出身の華人が多く、タイの雲南華人も含め、雲南華人の存在は大陸部の特徴と言えよう。ホーチミン市にはまたカンボジア難民華人のコミュニティーがある、難民移動も大陸部の特賞の一つに数えられよう。
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Research Products
(6 results)