2007 Fiscal Year Annual Research Report
生活者・商人のライフヒストリーに見るジャカルタの変容に関する調査研究
Project/Area Number |
18402034
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
倉沢 愛子 Keio University, 経済学部, 教授 (00203274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 耕 東海大学, 文学部, 准教授 (30269633)
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Keywords | 行商人 / インドネシア / マレーシア / 都市 / 低所得者 |
Research Abstract |
個々人の生活体験や活動の時間軸の中に全体の歴史がどう投影されているのか、そしてまた個々人の生活の集積が大都市の就容にどうかかわってきているのかを、インドネシアの商人たちの日常を記録することを通じて描き出すことを日ざし、現地で聞き取り調査を行なった。本年度は7月から9月にかけて倉沢が、マレーシアで活動するインドネシア人商人に対してこの調査を行なった。マレーシアは、国民の多くがインドネシアと同じ言語、宗教、類似した慣習を持つ人々であるが、一人あたり国民所得はインドネシアよりもはるかに高く、給与体系も良いため、数多くのインドネシア人が合法的にも非合法的にも出稼ぎに行ったり、商品をたずさえて国境を越え販売に歩いている。今回は、マレーシアのケダー州で、インドネシア人が、出稼ぎや商売に行っている先をおとずれ、約一週間にわたって聞き取り調査を行なった。 その後インドネシアへわたり、約一ケ月にわたりジャカルタ市南郊の、レンテンアグン地区に滞在し、ここに居住する商人たちの日々の活動を追った.本年はとりわけ行商人に焦点をあて、ある一つの町内会に居主する対象者全員に面接し、聞き取りを行うとともに、その中の何人かを選んで彼らの一日の生活を観察させてもらった。すなわち、早朝から夜まで彼らに密着して、仕入れ、準備などから始まってその商活動の全貌を観察させてもらった。そして彼らの仕入れルート、販売ルート、日々の収入規模、顧客層などを 自らの目で確認した。交通事情の悪いジャカルタでは、住民たちにとっては、食材、日用品、スナックなど日常生活に必要なほぼすべてのものを行商人から安い価格で入手することによって日々の生活が成り立っている。しかし行商という仕事は、一般的に他に収入手段が無い人たちが、しかたなく従事する最下層の職業であって、何か他に良い仕事があれば転職する事を前提とした、一時的な性格のものだというのが定説であった。しかし今回のこの観察から得られた一つの結論は、彼等はかならずしもこの仕事を否定的にみておらず、むしろ、努力いかんによってはかなりの収入にありつける場合もあること、たとえ小規模であっても自営であるため自由に創意工夫できること、営業時間などもその日の体調や気分によって自分で調節できることなどから、むしろ好んでこの仕事についている者が多かったということである。不安定な仕事ではあるが、安定性よりも、「自由」に重きをおこうとする傾向がみられるということである。
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Research Products
(7 results)