Research Abstract |
(1)中国・ロシアでの電磁気観測 当初計画では,平成18年度中にロシア,中国東北部において,新たに磁場3成分観測,ネットワークMT(通信回線を用いた長基線地電位差)観測を開始する予定であった.本計画では,マントル遷移層に至る深部広域電気伝導度構造解明を目指しているため,その推定に必要な数10日程度までの超長周期の電磁気応答関数を決定するために,少なくとも1年以上の連続観測が必要となる.そのために観測機器を現地に残置して観測を継続する必要があるが,最終的にその了解をロシア側と取ることができなくなったため,ロシアでの新たな観測は断念することにした.中国においても,観測点の設定や現地地震局との交渉が長引き,観測の開始は平成19年度にずれこむことになった.また,メタリック回線が中国においてもすべて撤廃されている現状から,ネットワークMT観測は実施することが出来ず,3成分磁場観測による磁場変換関数(GDS)法観測のみを行うことにした.その観測点として,まず,内モンゴル自治区シリンホト周辺と黒竜江省ミーシャンを選定した.中国政府によって1990年代より磁場3成分を観測する地磁気観測点が中国全土に整備されてきたが,上記2点はその観測空白域をうめることになる.また,ミーシャンは中国東北部最東端に位置し,当初,観測を予定していたロシアウラジオストックにも近い.この計画にあわせて,従来,日本におけるネットワークMT観測用に開発,改良された機器を平成19年3月に北京に携行し,特にインターネットによるデータ転送が中国においても正常に機能することを確認した.その後,中国側の観測点の決定,観測許可がおりるのを待って,平成19年10月に磁力計2台を中国へ送付し,観測開始に向けて,すべての準備を完了した. (2)既存データの解析 中国地さ震局地質研究所のTang,Zhao両教授の研究グループと共同して,(1)で述べた中国政府によって整備された磁気点のうち,中国東部の約30点の磁場3成分データのコンパイルを行った.地点によってデータ長の違いはあるが,数年から10年にわたるデータをコンパイルし,磁場鉛直-水平成分間の周波数応答関数を推定した。応答関数から電気伝導度構造を推定する本格的な解析は平成19年度以降に行う予定であるが,マントル遷移層にスタグナントスラブが存在するとされる中国東北部と存在しない東南部で明瞭な応答関数の差異が認められた.また,本研究計画の前段階で取得した中国東北部におけるネットワークMT観測データの解析を行った.これらの成果は,今後,学術誌にて発表していく予定である.
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