2006 Fiscal Year Annual Research Report
トリパノソーマ原虫の薬剤耐性と原虫遺伝子多型の解析
Project/Area Number |
18405037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小沼 操 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (70109510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助教授 (90250498)
井上 昇 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教授 (10271751)
今内 覚 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助手 (40396304)
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Keywords | トリパノソーマ / 薬剤耐性 / 抗原虫薬 |
Research Abstract |
トリパノソーマ原虫症は、アフリカやアジアの人、家畜および野生動物に感染し、多大な被害を与えている。本症は、ワクチンによる制御が困難であるうえ、近年、原虫薬剤耐性株の出現によってその被害は深刻化しているが、どのような機序で薬剤耐性になるかは不明である。そこで本研究では南アジア、南米およびアフリカに分布するトリパノソーマ・エバンシー(Trypanosoma evansi : T.evansi)の多型解析と薬剤耐性機序について検討した。まず、中国ならびにフィリピン共和国での本症の分子疫学調査を行った。すなわち中国東北部福建省龍岩市(Longyan city)にて牛15頭、水牛35頭、羊21頭および中国土着牛である黄牛5頭より血液を採取しDNA抽出後、PCR法による検出を試みた。その結果、牛15頭中4頭(26.7%)および水牛5頭中1頭(20%)からT.evansi遺伝子が検出された。一方、フィリピン共和国ルソン島8地区において牛105頭、水牛343頭、山羊89頭、羊38頭および馬6頭について同調査を行った。その結果、水牛12頭(3.5%)が陽性を示した。現在、薬剤耐性関連遺伝子の遺伝子多型の有無について検討している。 今回の分子疫学調査における陽性牛には、抗トリパノソーマ薬であるSamorinによる治療を受けたのにも関わらず原虫が検出された患畜が含まれていた。すなわち、原虫薬剤耐性株の存在である。T.evansiの特異的遺伝子であるRoTat1.2遺伝子をターゲットとしたRea1-timePCR法を開発した。すなわち、T.evansi実験室株(タイ分離株)を健康牛の血液で希釈後(10^8から10^1/ml濃度まで)、DNA抽出キットを用いてテンプレートを作成しReal-time PCR(ロッシュ社)を行なった結果、検出感度は10^2/ml濃度の原虫濃度まで検出可能であり高感度検出ならびに定量法が確立された。T.evansi薬剤耐性株の出現が深刻なフィリピン共和国において、陽性牛の血液をマウス(BALB/c)に接種し原虫9株を分離した。今後、in vivoにおいて分離原虫のSamorinに対する感受性、すなわち薬剤耐性の確認を今回開発したReal-time PCRをもちいて定量解析を行なうとともに薬剤耐性遺伝子の同定およびその推移について検討したい。
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Research Products
(1 results)