2007 Fiscal Year Annual Research Report
多様な動的パターンの選択に基づく細胞インテリジェンスの創発
Project/Area Number |
18500229
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高木 清二 Hokkaido University, 電子科学研究所, 助教 (80372259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 哲男 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20113524)
中垣 俊之 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70300887)
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Keywords | 真性粘菌 / Physarum / 振動パターン / 回転ラセン波 / 原形質流動 / 情報統合 / 行動決定 / 細胞運動 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は真正粘菌の変形体を非平衡開放系で時間発展するシステムとしてとらえ、その高度な情報処理能力とその原理を調べ、生命現象を包括的に理解することである。主に以下の研究成果が得られた。 1.摘出内質ゾルの発展過程に現れる多様な動的パターンとそれにより発現する生理機能 嫡出した内質ゾルは調整後10分程度で収縮弛緩運動を開始し、その時空間パターンは時間経過とともにI)定在波、II)時空間カオス、III)回転ラセン波、IV)同期パターンと発展する。同期パターンを示す変形体は管構造を形成し、同期パターンから回転ラセン波に遷移すると管構造が破壊される事が分かった。また、局所的な光刺激により回転ラセン波と同期パターン間の遷移を制御することに成功した。 2.原形質流動の流速場測定システムの構築 微小変形体を顕微鏡下で観察し、細胞内の原形質流動の流れ場と細胞の変形を同時に計測する画像解析システムを開発した。変形体の規則的な収縮弛緩運動、原形質流動および細胞の移動の相関を調べる事により、細胞運動のメカニズムの一つが明らかとなった。変形体の収縮および弛緩運動は共に細胞の後部から始まり前方に伝播する特徴的なパターンを示し、その運動により起こる往復流動が原形質を実効的に前方へ輸送し、細胞の重心を移動させている。 3.複合刺激の情報統合機構 粘菌変形体に忌避・誘引の混合刺激を与えた際の応答を膜受容、収縮弛緩振動のダイナミクス、細胞行動レベルで調べ、細胞の情報統合機構を調べた。その結果共存する誘引物質濃度が高くなると共に忌避行動の現れる忌避刺激強度も高くなる事が分かった。また、変形体が行動判断を行う際、収縮弛緩周期よりもおよそ10倍長い周期の遅い位相変調ダイナミクスが顕在化し、そのリズムで位相波の方向が変化し、行動が決定されることが明らかになった。
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