Research Abstract |
【目的】魚類のウロコは,膜性骨に似た硬組織であり,骨芽細胞,破骨細胞及び骨基質が備わっている。そこでウロコに注目し,ウロコを骨のモデルとして用いた培養、検定法を確立した。昨年度は,その方法を用いて,低出力超音波パルス(LIPUS)の骨組織に対する影響を解析した。その結果,LIPUS刺激により,破骨細胞ではなく,骨芽細胞が活性化することが判明した。しかし通常のウロコでは,破骨細胞が活性化していない可能性があり,本年度は破骨細胞を活性化したウロコを用いて,LIPUSの影響を評価した。さらにウロコで得られた条件を哺乳類(マウス等)の歯に応用し,歯の発生に及ぼす影響を組織学的に解析した。 【研究成果】 1)魚の右側の全てのウロコを取ると,右側のウロコを作るため,左側のウロコの骨吸収、骨修復が進行し,骨芽及び破骨細胞の活性が上昇するという結果を得た。そのウロコに対し,昨年度決定したLIPUSの条件(60mW/cm^2(I_<SATA>),1MHz,50% duty factor,0.5Hz刺激周期,6分間)を用いて解析した。その結果,LIPUSにより,骨芽細胞の活性は4個体中3個体において有意に上昇し,破骨細胞の活性は4個体全て,有意に低下した。したがって,LIPUSには,骨芽細胞を活性化するだけでなく,破骨細胞の活性を抑制する作用もあることが判明した。 2)マウス胎仔(発生14日)の下顎臼歯の歯胚をTrowel法によって培養すると,およそ14日で,歯胚は著しく発生、成長し,蕾状期,帽状期,鐘状期初期へと形態を変え,象牙質形成とエナメル質形成を始める。この歯胚に対して,いくつかの条件(前項の条件を含む)でLIPUSによる超音波実験を行い,経日変化は実体顕微鏡で,9日後の歯胚は組織切片作製による組織観察を行った。現時点では十分な例数が得られていないが,象牙質形成を促進させる作用を見出した。今後より詳細な解析を行う予定である。
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