2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18500674
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 稔明 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (40295572)
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Keywords | 科学教育 / 理科教育史 |
Research Abstract |
2006年度の研究業績は、論文においては、日本理科教育学会の『理科教育学研究』に掲載された「「小学校ノ学科及其程度」と地文学」(Vol.47,No.1)と、学会発表においては、中部教育学会第55回大会での発表「理科の誕生と実業教育思想」(6月24日)である。 「「小学校ノ学科及其程度」と地文学」では、小学校ノ学科及其程度の理科項目に含まれる地文学的内容に関して検討を行った。新教科理科は従前の博物・物理・化学・生理を統合したものといわれてきた。しかし、小学校ノ学科及其程度理科項目には、これらの範疇には含まれない地文学的要素が多く含まれている。実際に「小学校ノ学科及其程度」の理科項目は、「理科ハ果物穀物菜蔬草木人体禽獣虫魚金銀鋼鉄等人生ニ最モ緊切ノ関係アルモノ日月星空気温度水蒸気雲露霜雪霰氷雷電風雨火山地震潮汐燃焼錆腐敗喞筒噴水音響辺響時計寒暖計晴雨計蒸気器械眼鏡色虹槓杆滑車天秤磁石電信機等日常児童ノ目撃シ得ル所ノモノ」となっており、このうち、「果物穀物から金銀鋼鉄まで」の部分は博物的なもの(人体は生理に関するもの)、「燃焼錆腐敗」は化学的なもの、「喞筒噴水から電信機まで」のほとんどは物理的なものである。しかし、「日月星空気温度水蒸気雲露霜雪霰氷雷電風雨火山地震潮汐」の部分の諸現象は、従前の「小学校教則綱領」で規定された博物、物理,化学,生理のいずれの範疇にも入らないもので、当時においては地文学と呼ばれた学問において扱う諸現象である。本論では、理科の内容に地文学が挿入された経緯を考察した。小学校条例取調委員のメンバーの一人である文部省御用掛西村貞は「地文学は幼童の理学教育に最適」との考えを持っており、この考えの反映として新教科理科の内容に地文学の要素が多く含まれるようになった。これは当時において西村貞は理学教育の第一人者であったためである。 また中部教育学会における発表は、本研究の準備となった研究の発表であった。
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