Research Abstract |
宮崎平野に分布する段丘面を覆うテフラは,南部で25m以上,北部で5m以下の厚さで分布しており,日向ロームと呼ばれている。また,中~前期の堆積物中にも多数の水成テフラが確認される(Endo,1968;木野・太田,1976;木野ほか,1984;遠藤・鈴木,1986;長岡,1986;図.2)。これらの後期更新世から完新世までの層序については,ほぼ確立しているが、中~前期更新世のテフラ層序については,平野全体の層序や対比が確立していない。本発表では,宮崎平野における前期・中期更新世のテフラ層序を確立し,後期更新世から完新世のテフラ群と併せて、過去60万年間の霧島火山の爆発的噴火史を考察する。テフラについては,双眼実体顕微鏡による斑晶鉱物および火山ガラスの観察と温度一定型屈折測定法により屈折率測定を行った。さらに,一部のテフラのフィッション・トラック年代測定を行った。宮崎平野から霧島火山東麓に分布する過去約100万年間のテフラは50ユニット以上あり,その約8割は、霧島火山やその近傍を給源とする。テフラから霧島火山周辺の爆発的噴火史の復元を試みた。テフラは,900-600kaの先霧島火山群と550-0kaの霧島火山によるものに分けられる。先霧島火山群の詳細は不明である。一方、霧島火山は、550-300Maの古期霧島火山と300-0kaの新期霧島火山の2つの活動時期に分けられる.古期霧島火山は,カルデラ形成を伴う2度の大規模な小林笠森・加久藤火砕流の噴火を特徴とし、さらに間欠的なプリニー式・ブルカノ式・マグマ水蒸気噴火を伴う。こうした噴火の特徴から、古期霧島火山は、ブルカノ式噴火やマグマ水蒸気噴火からなる01ステージ(約550ka)、大規模な小林笠森降下軽石・火砕流を噴出し、小林カルデラを形成した02ステージ(約500ka)、プリニー式噴火やマグマ水蒸気噴火からなる03ステージ(約400ka)、大規模な加久藤火砕流噴出と加久藤カルデラ形成からなる04ステージ(約300ka)に細分される。新期霧島火山の爆発的活動は、加久藤火砕流噴火直後の0.3Maから始まり、現在に至る。テフラに基づくと,霧島火山の爆発的噴火は,平穏期および休止期の存在,噴出率の違いなどにより,Y1ステージ(300~130ka),Y2ステージ(130~50ka)は,Y3ステージ(50~30ka),Y4ステージ(30~50ka)に区分される。いずれの活動も溶岩流と降下テフラを主体とする噴火からなる。Y3ステージは霧島火山の活動の中で,最もテフラの噴出率が最も高く,爆発的で大量の降下テフラを広い範囲に飛散させた時期である。
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