2006 Fiscal Year Annual Research Report
大都市沿岸域に造成された人工水域の順応的保全-海水導入に伴う湿地生態系の変化-
Project/Area Number |
18510014
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
矢持 進 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30315973)
|
Keywords | ジュズモ / アオサ / 人工塩性湿地 / 都市 / 海水化 |
Research Abstract |
大阪南港野鳥園の北池と南池は,開園当初淡水池であったが,それぞれ堤防下に海水導入管が敷設されて海水化し,以降グリーンタイドが発生した.ただし2つの湿地は隣接するものの異なる緑藻類が出現し,北池ではアナアオサが,南池ではジュズモ属の一種が優占している.本研究ではこの優占藻類の差異を乾燥(地盤高),日積算光量,塩分などに着目して解析を行った.その結果,次のような知見が得られた.外海の潮位差に比べ大阪南港野鳥園の両池の潮位差は小さく,さらに千潮・満潮の時刻は,大阪港に比べ北池で約1時間,南池で約3時間遅れていた,これは,池の海水交換経路である海水導入管の断面積や本数,設置高さの違いから生じているものと推察された.両池の平均干出率は北池で17.3%,南池で9.2%であった.現地で採取した優占藻類の乾燥耐性を調べたところ,アナアオサの活性は15分で33%,30分で17%に低下し,60分で完全に失活した.一方ジュズモ属の一種は,15分間以上の乾燥により失活した.これらから野鳥園の緑藻類は,乾燥による影響を一つの要因として異なる分布域を形成するものと考えられた.塩分低下に伴う活性の低下はアナアオサの方がジュズモ属の1種よりやや大きかったものの,統計学的に有意な差は見られなかった.これらの結果から(1)2つの池は,海水導入管の設置条件の違い等から海水交換特性が異なり,平均地盤高はほぼ同じものの,北池で干出率が高く,この干出率の違いと海藻の乾燥耐性が一因となって緑藻類の分布が別れているものと考えられた.(2)アナアオサの分布域では,比較的底生微細藻類の現存量が低く,高次生物への物質転送の観点からは,ジュズモ属の方が優れていると推察された.
|