2007 Fiscal Year Annual Research Report
大都市沿岸域に造成された人工水域の順応的保全-海水導入に伴う湿地生態系の変化-
Project/Area Number |
18510014
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
矢持 進 Osaka City University, 大学院・工学研究科, 教授 (30315973)
|
Keywords | 人工塩性湿地 / グリーンタイド / 人工干潟 / 窒素収支 / 海水化 / 都市 / 生物現存量 |
Research Abstract |
大阪南港地区にある野鳥園湿地と咲洲運河の環境特性や管理手法について調査するとともに、大阪湾とその周辺の干潟域の環境に関して整理・検討した。 南港野鳥園湿地では堤防下に海水導入管が敷設されて海水化し、以降グリーンタイドが発生した。北池ではアナアオサが、南池ではジュズモ属の一種が優占し、本研究ではこの優占藻類の差異を、乾燥(地盤高)に着目して解析を行った。両池の平均干出率は北池が17.3%、南池で9.2%であった。優占藻類の乾燥耐性を調べたところ、20℃の条件においては、アオサは60分までは乾燥の影響を殆ど受けないが、ジュズモは15分以上で活性が低下した。乾燥温度30℃の条件においては、乾燥時間0分の時のアオサの光合成速度は2.7mgO_2/g wetであり、60分まで乾燥させても光合成速度に低下が認められなかった。一方ジュズモの場合は、乾燥時間0分のときの光合成速度が2.1mgO_2/g wetであり、10分間乾燥させると1.3mgO_2/g wetまで減少した。さらに15分以上では殆ど光合成しなかった。このように30℃では明らかにアオサとジュズモの乾燥に対する耐性に差異が見られ(アオサ>ジュズモ)、高温で15分以上乾燥させるとジュズモは速やかに失活することが判った。これらの結果から、2つの池は海水導入管の設置条件の違い等から海水交換特性が異なり、平均地盤高はほぼ同じものの北池で干出率が高く、この干出率の違いと海藻の乾燥耐性が一因となって緑藻類の分布が別れているものと考えられた。 咲洲運河の環境改善手法を提案した.運河内に取水される海水に含まれる栄養塩の量を減らすために、取水口の水深を下げることが妥当と考えられた.また,運河内の流速を上げて水中および底泥の撹乱を引き起こし、藻類の増殖を阻害することを目的に運河の浅水化を行い、流速および海水交換量の増大を図った.しかし浅水化によっては運河内の流速は顕著に増大せず、夏に浅水化を行うと底層の水温が上昇し過ぎるため動物の生息を阻害するおそれがあり、効果的でないと判断された.微細気泡を用いた底泥耕耘効果も併せて検討し、有機物量や底生藻類現存量に一定期間の改善効果が見られた. その他、大阪湾とその周辺域の人工干潟や自然干潟の窒素収支と動植物現存量について考察した。
|