Research Abstract |
平成18年度は,日本が2003年に打上げたADEOS-2衛星搭載のPOLDER(Polarization and Directionality of Earth's Reflectances)センサデータ及びGLI(Global Imager)を基に,大気粒子光学特性の精密化を図るべく,複合利用用の基盤システムの整備を行った.これらはPOLDERレベル1データとGLIレベル2GACデータに対応しており,従来のPOLDERデータ単独の解析と比べ,複合利用により次の利点が得られた. 1.雲領域の判別精度向上 GLIの高解像度データ,及び幅広い波長データにより雲領域の識別精度が向上した. 2.吸収性大気エアロゾルの識別 GLIは近紫外領域で観測を行う.これらの波長データは,POLDERデータ単独解析では困難であった,バイオマス燃焼由来の煙の識別が可能となった. 導出精度向上のため,複合利用以外のアルゴリズムの拡張も実施した.具体的には,陸面偏光モデル決定に際し,大気補正処理手法を組合わせ,陸面偏光モデル決定に関し改善した.この手法の導入により,ある程度光学的に厚い場合でもモデル選択誤りが少なくなった.ADEOS-1,ADEOS-2全期間の全球大気粒子特性を,千葉大学,宇宙航空研究開発機構(JAXA)に放射収支計算向けの基礎データとして提供した.海域に於いて,ADEOS-2衛星に搭載された標準GLIアルゴリズム処理結果との比較より,POLDERデータの結果は光学的厚さで高めのバイアスがあることがわかった.今後,上記の新アルゴリズムで全シーン処理を行い,再検証する必要がある. 偏光データによる大気粒子特性導出手法を生かすべく,最近健康影響のため注目が集まっているPM2.5の濃度分布図をアジア地域で作成した.これらには,本研究で実施した,衛星データ解析,並びに大阪地区で実施した大気放射観測(放射観測,PM2.5,PM10計測)が大いに役立っている.
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