2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本産コイ(コイ目コイ科)のルーツ解明と保全へのシナリオ
Project/Area Number |
18510209
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
瀬能 宏 Kanagawa Prefectural Museum of Natural History, 学芸部, 専門研究員 (80202141)
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Keywords | 分子系統 / コイ / 保全 / 外来種 / 分類 |
Research Abstract |
ミトコンドリアDNA(mtDNA)に基づくこれまでの研究により、日本の自然水域に生息するコイには、日本在来の系統と、中国やヨーロッパから導入された個体に由来する系統がいることがわかっている。両系統は広く交雑を起こしていると推定されるが、琵琶湖の各地で得られた750個体以上のコイのmtDNAを分析したところ、湖内の北部ほど、また沖合いほど在来系統のハプロタイプが高頻度で検出される傾向があることが判明した。確証を得るには核DNAの検証を待たねばならないが、琵琶湖では在来と外来のコイの間にある程度の生殖的隔離が成立していることを強く示唆するものである。日本在来のコイが大陸由来のコイCyprinus carpio Linnaeus,1758と別種となれば、その保全を進めるためには保全対象を分類学的に明確にしておく必要がある。日本産のコイには、シーボルトがオランダへ持ち帰った標本に基づき、1846年、テミンクとシュレーゲルによって3つの学名が与えられている:Cyprinus haematopterus、C.conirostris、およびC.melanotus。今回、オランダ国立自然史博物館に保管されているこれら3名義種のタイプを調査した結果、C.melanotusのレクトタイプが体高が低く、従来、琵琶湖で「マゴイ」と称されてきた在来コイと推定されるものに非常によく一致することが判明した。また、C.haematopterusのホロタイプとC.conirostrisのパラレクトタイプの一部は明らかに体高が高く、導入個体に由来する可能性が高いこともわかった。これらのことは、記録には残されていないが、江戸時代にはすでに大陸からコイを導入していた可能性をも示唆する。
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