2006 Fiscal Year Annual Research Report
変貌するインドネシアの政治暴力:選挙・開発・紛争地にみる民主化のジレンマ
Project/Area Number |
18510225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本名 純 立命館大学, 国際関係学部, 助教授 (10330010)
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Keywords | インドネシア / 民主化 / 政治暴力 / 地域紛争 / 組織犯罪 / 選挙 |
Research Abstract |
今年度は実りの多い研究期間となった。初年度ということもあり、政治暴力と民主化の関係を理論的に理解する作業や、実証研究に必要なデータの収集に励んだ。調査を進めていく中で、新たに発見したことも多く、とりわけ、民主化と政治暴力の間に存在する重要なファクターとして「組織犯罪の台頭」に注目する必要を強く感じた。この新しいファクターを調査の射程に入れることは、今後の研究の前進に欠かせないと思われる。研究実績としては、本科研の成果がフルに反映された論文を国際学術誌(INDONESIA)に発表した。また、インドネシアの政治暴力の歴史についての単行本をインドネシア語で出版した。さらに、インドネシアの組織犯罪の問題を含めて、東南アジア全般における政治と犯罪について、人間の安全保障の観点から実証分析した論文を英文編集本に執筆した。この3つの業績が今年度のメインであり、それらに加え、インドネシアの時事問題に関する執筆、国際会議への提出ペーパーが数本ある。 雑誌INDONESIAは、インドネシア研究における世界的な権威であり、ここに発表した論文については、きわめて独創的でインドネシアの民主化の実態を理解する上で大きな貢献である、とエディターからコメントをもらった。論文の内容は、インドネシアの地方自治体首長選挙における政治暴力の動態であり、特に国軍やギャングが、どのように政治過程に参入し、選挙に重要な役割を果たしてきたか、それによって市民社会の空間がどのように圧迫しているのか、についてジャワ島内3州の比較で分析した。また、インドネシア語の単行本は、同国の政治暴力の歴史について、とくにスハルト政権時代に焦点を絞ったものである。最後に英文編集本に書いた論文は、ASEAN地域の越境犯罪の拡大が、どのように各国の政治経済を蝕んでいるものかを分析し、それに対処するための地域協力の現状と課題について議論した。これらの成果は、来年度の研究に大きくつながるものであり、今後とも、調査に励んでいきたい。
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Research Products
(7 results)