2007 Fiscal Year Annual Research Report
変貌するインドネシアの政治暴力:選挙・開発・紛争地にみる民主化のジレンマ
Project/Area Number |
18510225
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本名 純 Ritsumeikan University, 国際関係学部, 准教授 (10330010)
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Keywords | インドネシア / 政治暴力 / 民主化 / 選挙 / 犯罪 |
Research Abstract |
本研究は、民主化後のインドネシアにおける政治暴力の変容について調査するものであり、平成19年度は、当初の計画通り、ポスト紛争地であるアチェ州の事例を中心に調査を進めた。アチェでは、2006年に史上初の直接首長選挙が実施され、国際社会が見守る中、民主的な地方政治の基盤が作られた。これによって、政治と暴力の関係はどのように変わったのか、その変化はアチェの持続的な平和にどう影響するのだろうか。この疑問に答えることが、本研究にとって重要な課題となった。7月のジャカルタ調査では、その選挙実施に携わった政府関係者やNGO関係者と面談を行い、選挙の問題点や、元独立派ゲリラたちの処遇の問題について、多くの知見を得た。また、一次資料の収集も成果があった。調査結果から見えてきた現実は、市民の期待とは裏腹に、民主選挙の結果、政治暴力は衰退するのではなく、制度変容に順応する形で、日常の政治過程に浸透していくというジレンマだった。その典型が組織犯罪の増加であり、「政治と紛争」の関係が「政治と犯罪」に発展しつつある。この力学を理解することは重要であり、特に国際社会が持続的平和に向けての支援を模索する上で、考えなければならない課題を暗示している。以上の分析を研究成果として発表してきた。その過程で、この問題は、他の紛争地でも類似性を持つことが分かり、比較の視点が研究の飛躍につながると確信している。その意識から、東南アジアのなかで比較調査する準備も始め、まだ初期段階ではあるものの、民主化・暴力・犯罪のリンケージについての大きな研究構想につながりそうな予感がしている。その意味でも、19年度の研究には大きな前進があったと認識している。
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Research Products
(12 results)