2008 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツ指導者と競技者のセクシュアル・ハラスメントに関する認識と経験の現状と特徴
Project/Area Number |
18510233
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
熊安 貴美江 Osaka Prefecture University, 総合教育研究機構, 准教授 (90161710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 貴子 帝塚山学院大学, 人間文化学部, 教授 (60099554)
吉川 康夫 帝塚山学院大学, 人間文化学部, 教授 (90200964)
太田 あや子 武蔵丘短期大学, 健康生活科, 准教授 (80258946)
高峰 修 明治大学, 政治経済学部, 講師 (10409493)
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Keywords | スポーツ / セクシュアル・ハラスメント / 指導者 / 競技者 / 認識 / 経験 / 現状 / 特徴 |
Research Abstract |
スポーツ指導における、暴力を含む反倫理的行為とセクシュアル・ハラスメント(以下SH)になりうる行為に関して、指導者と選手にアンケート調査を行い、その実態や認識の特徴を考察した。暴力関連行為については、おおむね9割以上の指導者が不適切との評価をしたが、罰としてのトレーニング等には、1割程度の指導者が適切と判断した。全般に、評価に比べて、実際にその行為をおこなった割合は高く、また男性指導者の方が女性指導者より多く行っている。選手(国体レベル)は総じて、暴力関連行為に対して指導者より許容的な傾向を示した。男性指導者から女性選手へのSHになりうる行為に関して、主に指導関連以外の行為については、指導者の9割以上が不適切と評価した。指導に伴う身体接触や月経に関する質問などは比較的容認される傾向があり、これらの行為を(見聞も含め)実際に行なう率も高い。総じて、不適切とする評価に比べて、実際にその行為を行なった(見聞含む)割合は高い。選手(国体レベル)は総じて、SHになりうる行為に対しても同様に、指導者より許容的な傾向を示した。さらに自由記述分析では、指導者、選手とも、SH行為に対しては、指導に必要な行為との線引きにとまどいつつも、おおむね許されないとの認識を示したが、暴力行為に関してはむしろ、勝利のためなら許される、愛のムチといった肯定的な意見が、否定的な意見と拮抗する傾向がみられた。また、そうした暴力行為が第三者も含めた指導場面で許容され、共通認識として受容されている点も見受けられた。背景として、日本のスポーツ状況がボランティア的指導に支えられているために、指導者と選手の関係が接近しすぎ、閉鎖的な空間の中で選手の私物化が生じるのでは、との指摘もあった。今後の課題として、スポーツ環境の中で人権意識を高め、オルタナティブなスポーツ指導モデルを提示していくことが必要だと考えられる。
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